参加ご希望の方は事前申し込みをお願いします。
出演:桂英史、今福龍太
司会:佐藤真(『談』編集長)
【日時】
8月14日(金) 20:00〜22:00(19:30開場)
【場所】
本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-12-4 2F
【入場料】
1500yen+1drink order(500yen)
『談』 no.103「メディア化するコミュニケーション」刊行記念トークイベント
『談』公開対談第1夜。「粉川哲夫さんと廣瀬純さんの対話」
トピックな話題から入ればいいと思いネグリ来日中止の話から始めてもらう。ネグリ、ガタリときて自由ラジオへつなぎ、そのままラジオアートに流れていけばいい、と思ったからだが、やはり、そうは問屋が卸さなかった。ネグリの話がとぐろを巻くごとく、ぐるぐる回り出す。まさに「ネグリでんぐり」。
粉川さんは、中止にいたった経緯とその対応へのコメント、またネグリ個人に対する感想を述べると、廣瀬さんは、ネグリの思想は、ネグリ・ハートの三部作「帝国」「マルチチュード」「コモン」で捉えるべきで、そこでネグリが一貫してとっているのは、「逆手にとる」という方法ではなかったと指摘。この意見に対して、粉川先生はすでにその「逆手にとる」ということが古いのではないか。返り咲いたベルルスコーニが画策しつつあるグローバルなメディア戦略に対しては、「逆手」では対抗できない、もっと別のこと=「オルタナティヴ」を考えなくてはならない。たとえば、粉川さんのドメイン名である「translocal」、サイト名である「polmorphous」がそのヒントになる。
インターネット環境以降のトランスメディアの可能性として、ラジオのミクロ性に改めて注目し、インターネットとそれを接続することで、グローバルかつミクロなオルタナディメディアを作り出していけるのではないか、と提言する。alternativeとは、alter=変える、とnative=土着の、が合体したことばだとイマジネーションを働かせれば、それはまさに土着性それ自体を更新するという意味になる。「グローカル」がすでに権力に取り囲まれている概念とすれば、むしろ、無数の土着=最小のコミューンをネット上にリンクすること、それが今のalternativeだ。この発想は、廣瀬さんの闘争の「最小回路」=結晶化という考えと共鳴するものだとぼくは理解した。途中、「美味しい料理の哲学」を巡って、大声を張り上げての激しいやり取りが展開されたが、これはライブならではの醍醐味。こういうことがあるから、面白いのだ。さて、明日はどんな話が展開するか、楽しみ。
TUBE GRAPHICS・木村博之さんのインタビュー。「ご尊父は捕鯨船に乗っていたんですよね」と話を向けると、「これ知ってますか」と言って棚に飾ってあったクリーム色の物体を二つもってきた。「クジラの歯です、面白いでしょう」。子供の時にもらったのだという。ご尊父は、アイスランドやガーナやカナリア諸島と遠洋航海に出て、いく先々の寄航場所から、手紙をくれたのだそうだ。それで、そこがどこかを知りたくて、地図を買って調べ始めたのが、地図に興味をもったきっかけだった。郷里の宮城県女川は、金華山沖でクジラ漁をやっていて、小学生だった木村少年は、毎週のようにニッスイの工場で行われていたクジラの解体を見に行っていた。一方で地図に、他方で解体ショーに。その後地図製作とグラフ制作が合体していく木村さんの思考は、すでに少年時代に準備されていたのだ。木村さんの地図づくりのフィロソフィーに共感する。多面的な見方、こっちからみたり、あっちから見たり、俯瞰したり、下から仰いだり…、世界をさまざまな視点で眺めてみる。そして、地図という2次元の世界にそのまなざしを投影していく。それが、木村流立体地図なのだ。単なるアクソメ図ではなくて、想像力の立体地図といったところか。 →TUBE GRAPHICS
ところで、木村さんには以前『談』no.48別冊「混合主体のエチカを求めて」で、面白い地図をつくってもらった。ちょうど地球の真裏同士に位置するカリブ海とバルカン半島。一方は海洋、他方は大陸という違いはあるけれども、人種・民族の混交が激しく進みクレオール文化圏を形成しているという意味では似ている地域。魚眼レンズで見てみると、まるで同じ場所が図と地を反転しているように見えてしまうのだ。「あれは面白かったですよ」と木村さんに伝えたら、すっかり忘れておられた。う〜ん、ちょっとがっかり。