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『談』no.121 特集 「複合危機とポスト資本主義」
「ニューノーマル2・0の世界」の第1回
水野和夫(著)、諸富徹(著)、酒井隆史(著)
アルシーヴ社(編集)
■企画趣旨
地球温暖化を中心とした地球環境危機と急激に増大する世界の人口に対応できないエネルギー、水や食糧などの不足というグローバルな資源危機は、同時に起こっているため、合わせて地球環境危機=複合危機と呼ぶべきだろう。現在のところ、その端緒が始まっているだけだ。本格的な被害は、今世紀の中頃から顕著になっていくと予想される。複合危機をいかにして乗り越えるか。そのためには、一刻も早く資本主義を終わらせて資本主義のオルタナティブへソフトランディングさせることだ。ポスト資本主義は、いかにして可能か。
■水野和夫インタビュー
資本主義を閉じるために今できること
資本の論理と人間らしく生活する論理が乖離している現在、資本主義を正しく終わらせる方策を見つけ出すことが急務であり、そのためには、「閉じた経済圏」をつくってヒト・モノ・カネがあまり動かないようにすることだと水野氏は説く。それは、定常社会という新たな社会モデルを構想することである。
水野和夫(みずの・かずお)
1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。
著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他
■諸富徹インタビュー
非物質主義的転回が拓く資本主義の未来
資本主義の非物質主義的転回が望ましい変化であるかどうかは、それが成長に寄与するか否かだけではなく、それが持続可能で公正な資本主義への変化を促すか否かで判定すべきだと説くのは諸富氏である。資本主義の非物質主義的転回によって、成長を維持しつつ生き残る道はあるのか。
諸富徹(もろとみ・とおる)
1968年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。専門は、財政学、環境経済。
著書に『資本主義の新しい形』(岩波書店 2020)、『グローバルタックス:国境を越える課税権力』(岩波新書 2020)他
■酒井隆史インタビュー
死してなお世界を支配し続ける資本というゾンビ
90年代猛威を振るったネオリベラリズムは、金融クラッシュの煽りを受けていったんは死んだかに見えた。ところが、2010年代を迎えると不死鳥のように蘇る。しかもより強力になって…。
〈資本〉には、「反生産」という破壊的要素があると指摘したのはドゥルーズとガタリだ。ドゥルーズとガタリによれば、「反生産の装置の浸出こそは、資本主義の全システムの特徴である。資本主義の浸出は、その過程のあらゆる次元において生産のなかに反生産が浸出することである。そして、この反生産の浸出のみが資本主義の至高の目標を実現しうるのだ」。資本主義は死なない。なぜならば、資本主義はすでに十分死んでいるからである。反生産の契機が生産を食い尽くすように、資本主義はゾンビのように死を生き続けるのだ。
酒井隆史(さかい・たかし)
1965年熊本生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、大阪府立大学人間社会学部教授。専門は、社会思想、社会学。
著書に『通天閣:新・日本資本主義発達史』(青土社 2011)、『暴力の哲学』(河出文庫 2016)他
◎表紙・裏表紙は上田碌碌の水彩画、また、ギャラリーでは小村稀史の油彩を掲載