二日にわたってライブに行ってしまいました。渋谷0-EASTでの「トランス・ヨーロッパ・フェス」。1日目がシンク・オブ・ワンで2日目がKiLA。シンク・オブ・ワンはベルギーのバンド。彼らは世界のさまざまな場所に赴いて、現地のミュージシャンと寝食をともにしながらアルバムをつくるということをやってきました。今回は、最新アルバムでコラボレーションしたブラジルのミュージシャンと来日。ジャズ、ロック、フアンクをある時はダブに、ある時はアラビックにアレンジして、最終的にはラテンフレイバーをまぶしつつブラスバンドで出力するという離れ業をやってのけます。 一方のKILAは、アイルランドのバンド。アイルランドの伝統音楽トラッドをベースに、アフロ、カリブ、ジプシー、ファンクがミックス。こっちは、それをサイケデリックでダンサブルなトランスで出力。哀愁をおびた熱狂ダンス系という、これまた二つと無い破天荒な音楽をつくり出します。両者に共通しているのは、融合への強い欲動。グローバリズムとは正反対の、自ら越境し他者と溶け合い、渾沌化することへの力強い肯定の姿勢。寛容さを失い、「過防備都市」(五十嵐太郎)へと急速に向かいつつある僕たちの社会にとって、彼らの音楽は強烈な批判言語となります。「やっぱり必要なのは文化のクレオール化だ」、そんな強い気持ちが吹き出してきました。とはいえ、頭をカラっぽにして踊り続けていたわけですけどね。
ライブ・レポート
■シンク・オブ・ワン
7時になると、なにやら聞いたことのあるブラスの音。いきなり「渋さ知らズ」が登場。いつものメンバー、兄貴も乳房さもおしゃもじ隊もいる。兄貴は極端にでっかいリーゼントのヅラにプレスリーのコスチューム(といってもアンコールに出てきた時はいつものふんどしにはっぴ姿だったが)。おなじみの曲を3曲。でも、すごくいい演奏だった。FUJIのクロージングのあのバカ騒ぎを、彼らは忘れようとしているのかもしれない。とくに片山さんなんか、アトムとかタブーとかやっちゃうし。「乳房さ」がヅラをとって踊るのを見たのは初めてだった。さて、休憩をはさんでいよいよシンク・オブ・ワンの登場。ブラジル勢4人を加えたプロジェクト「シュヴァ・エン・ポー」だ。パーカッションが激しくリズムを刻む。いきなりブラジリアン風で始まるが、次々にリズムは変化し、ブラスが加わるともうすっかりシンク・オブ・ワンの世界に。いやー楽しい。激しさの中にもさわやかさが漂う。ラテンフレイバーが前面に出ているものの、ファンクやレゲーのリズム、あるいはアラビックな旋律がニュオリンズ風ブラスバンドのスタイルに昇華されて顔を出す。ブラジル勢ではドナおばさんの歌と踊りが迫力満点。両手でvサインをしながらその指を折り曲げ、次に親指を立てて同じように指を数回折り曲げる。これはいったいなんのサインなのか。背後のプロジェクターの画面には蟹が表れる。もしや、彼女にとっての蟹のポーズなのだろうか。その調子でほとんど休みなく演奏が続いた。アンコールには、KILAのフルートと笛の二人が加わり、さらに渋さも入って大ジャムセッション。最後にもう一度メンバーで演奏して大団円。
■KiLA
7時開演と同時にKILAが登場。いきなりすっ飛ばす。すごいリズム、すごいグルーヴ。CDを聞くかぎりでは、確かに反復系で僕の好みではあるが、キャッチコピーにあるようなぶっ飛ぶようなトランスはそれほど感じなかった。ところが、生の演奏はちがっていた。溢れるばかりのリズムの洪水。これがほんとのトランスか、と納得させるような強力な反復。とにかく、すさまじいの一言。フロントを務めるボーランという打楽器奏者でヴォーカルのローナン・オ・スノディの野生的な魅力はもちろんだが、オ・スノディ兄弟、ブライアン、ランス兄弟、唯一の女性ディーがさまざまな楽器を使いこなしてつくりだす変幻自在の音とのアンサンブルがなんといっても最大の魅力だろう。オーウェンのイリアン・バイプスというアイルランドの楽器が面白い。アルバム「ルナ・パーク」でメロディーを奏でているのはこの楽器だったのだ。KILAのすばらしさは、トランシーでサイキックでその意味ではクラブミュージックと寸分変わらないのだが、根元のところにしっかりとしたトラッドという伝統が息づいているところだ。曲によっては、しっとりと静かに歌いあげるバラードがあったり。これなんかを聞くと、ロマンティックなトラッドそのもの。「あっそうだよ、KILAはアイリッシュ・トラッドのバンドだったじゃないか」と思いだしたり。たっぷり2時間、アンコールにはシンク・オブ・ワンやアイヌのトンコリ奏者OKI、ヒート・ウェーブの山口洋も加わって、再び大ジャムセッション。今日もすっかり堪能してしまった。