香山リカさんより『〈私〉の愛国心』(ちくま新書)を贈呈していただきました。まだ全部読んでいないのですが、本書は、『ぷちナショナリズム症候群』(中公新書)の続編にあたるようです。現代の若者のナショナリズムへの傾斜を論じた著者は、今や若者だけでなく日本人全体にその傾向がみられることを、「愛国心」というキーワードを手掛かりにその行方を探ろうとしています。あとがきで著者はこう書いています。「(…)自信家の国、それはアメリカであり、〈自信家にならねば〉と躍起になっている国、それは日本である。そして、日本は、その自信家になるための条件として〈愛国心〉が必要、と強く考えているようだ」。その結果、「私」を捨てても「国」として「公」として考えようではないかと言う。しかし、それはまったく逆ではないかと著者は言います。「〈私〉を大切にするあまり、公の意識を失ったことにあるのではなく、それぞれが本当の意味で〈私〉に向き合ってこなかったことにこそ、(問題が)あるのではないか」。つまり、日本人が積み残してきたのは〈私〉についての問題だったと香山さんはいうのです。これはじつは『談』の次の特集で考えてみようと思っていたこととも重なる問題で、大いに参考になりそうです。
<私>の愛国心