「野口体操」の普及、啓蒙に尽力されている羽鳥操さんから、『野口体操 マッサージから始める』を贈呈いただきました。
野口三千三さんを『談』初代編集長・栗山浩さんがインタビューしたのは、1980年だったと思います。すでにお二人とも故人ですが、『談』が一貫して追究している「身体とは何か」というテーマは、この時のインタビューがきっかけでした。野口さんのつくり出した「野口体操」。この世界でも希有な身体技法を自らの身体に完璧に取り込んだのが羽鳥さんです。土方巽の舞踏譜を完璧に取り込んだ芦川羊子さんの舞踏にも驚きましたが、野口体操のあの「寝にょろ」や「腕にょろ」をこともなげにやってしまう羽鳥さんにも驚愕させられました。身体の思想を字義通り“身体化”させてしまうのはなぜかきまって女子たちです。これこそ身体の大いなる謎であり、この謎解きに男どもは今後必死でとりくむまなければならないだろうと思っています。
「(…)自分のなかの悪いところを無理やり潰すような方法はとりません。今、ここに在るからだ、そこから出発するのです。多少不具合があっても、そっとそこにおいて、いいところを伸ばす。すこしだけ手を入れる感覚でからだを見直そうとするのが、野口体操なのです。自然には善も悪もない。矛盾もない。あるのは丸ごとの存在として、“今、ここに、在る”だけだと捉えるのです。/(…)体操は、からだの実感を手がかりに言葉本来の意味を取り戻し、そのことによって言葉に命を与える営みであるとも言えます。その営みは、言葉だけでなく、自然・人間・自分、感覚・思考・判断……、人間を取り巻くあらゆる事象から先入観を取り除く営みでもありました。からだと動きによる「体操」がそうした関係性を新しく結び合えたとき、「私にとっての体操」が「人間に役立つ体操」になるのでしょう。目的・効果をいとわないということは、体操に枠をはめて、皮相な技術に終わってしまうことを回避したかった野口の熱い思いからだと思います。/(…)おそらく野口体操ほど難しい体操は、他に類をみないでしょうか。《形を問わない。目標や目的や効果を言わない。体操には付きものの「ある動きを一日に何回もやりましょう」などという指示もしない》言ってみれば、“あなた任せの体操”です」
男子諸君、マッサージからでも初めてみませんか。謎解きはマッサージのあとで、ん ?!
野口体操 マッサージから始める (ちくま文庫)
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