tascでの講演(『tasc monthly』2008年9月 No.393に収録)が好評だった慶應義塾大学教授・渡辺靖さんの新刊(ちょっと遅いですけどね)。サブタイトルにあるパブリック・ディプロマシーとは、外交的な政策目標を実現しやすくするために、相手国の政府ではなく、相手国の国民に働きかけることで自国のイメージを向上させ、自国の存在感をアピールする活動のこと。我が国ではまだそれほど一般的ではないが、今後その重要性はますます高くなるだろうと指摘する識者も少なくない。アニメ、漫画などのコンテンツをクール・ジャパンと称し、海外への売り込みに躍起になっている我が国のどこかちぐはぐな対外文化戦略。その何が問題なのか。渡辺氏が説くのは、戦略の不在だ。だからといって用意周到すぎるマーケティングにも批判的。文化相対主義に立ったうえでどう戦略化していくか、今、必要なのは透明性と対話力ではないかという。バランス感覚が冴える好著だ。

文化と外交 - パブリック・ディプロマシーの時代 (中公新書)
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