新大阪から御堂筋線で本町へ。久太郎町にある橋爪紳也先生の研究室へ。先生は、目下、大阪府立大学特別教授、大阪府立大学観光産業戦略研究所長、大阪市立大学都市研究プラザ特任教授で、今年、橋下知事の政策アドバイザーに就任。八面六臂の活躍中である。

今度は、「石畳と淡い街灯まちづくり支援事業」の審査委員長として、まちづくり事業を手助けしていくことになった。 1.「まちの眠っている資産を掘り起こしてストックにしていくためのプラットホームづくり」 2.「大阪ミュージアム構想」 3.「コミュニティ・ツーリズム」この3本の柱をもとに、橋爪先生は、大阪の再生に本格的に乗り出したのだ。

かつて繊維産業で栄えた大阪・船場地区。産業の空洞化現は船場地域をも直撃している。なんとか往時の賑わいをとり戻そうと、さまざまなグループが活動を始めている。が、いかんせん、行き当たりばったりでもう一つ大きな力にならない。そこで、足並みを揃えることでシナジー効果をあげようと始まったのが「まちづくりプラットホーム」。戦前の近代建築が多く残っていることに注目し、リノベ、コンバージョンにより再生を試みるグループ、商店街の活性化を目指す若いオーナーたち、町の美化運動を続けている団体などが連携し合って、船場地域の価値を高めようというわけだ。「大阪ミュージアム構想」とは、まちすべての一つのミュージアムとみなし、まちに眠っている「人、モノ、価値」を掘り起こそうという試み。とにかく、町に飛び出して、コミュニティそのものを体験する面白さを発見する「コミュニティ・ツーリズム」。橋爪先生のアイデアは、じつは僕らも「C&L」でずっと主張してきたことだ。ただ、先生の場合は、それを頭の中にしまっておくのではなく、手や足、そして口を使って、実践しているのである。そこが偉いです。

大阪は、かつて日本のベニスと呼ばれたほど、運河が縦横無尽に交差する水の都であった。何よりもそうした歴史的記憶が大きな財産である。記憶を蘇らせればいい。東京とはちがった可能性があるように思う。先生にそう言うと、「確かにそうだけど、いったん動き出すと東京は早いんだよね。神田川のクルージングなんか、川めぐりというアイデア自体はうちの方が早かったのに」と悔しそうだった。しかし、いずれにしても、先生の構想する大阪の再生は、夢があって面白そう。しばらくは、その動向を見守っていたいと思う。帰りは、船場地区再生の一つ、三休橋筋をガス灯にするプロジェクトを視察。途中、「rucola」でワインを飲む。