dzumiへ。毛○君、宮○○君、深○君、そして○川さん、それに店主のIさん。Tさんの研究会の発起集会になるはずの今日の集まりが、延期の報告集会になった。S文化とはなんだったのか、体系的に理論立てて整理することはとても重要だと思う。だから、ぼくも関心をもったわけだが、内部にいた人たちとはだいぶ温度差があることがわかった。
上○さんとTさんの対談で、僕が一番不満に思ったのは、上○さんは結局のところ、消費者の立場からSと向き合っていたわけではなかったことだ。消費者といういうのは、Sグルーブのお客さんという意味。上○さんが、S文化の誕生と成熟を評価しながら……それは小売業として文化に関わり続けたTさんを高く評価してという意味でが……、その本業が立ち居かなくなって、最終的に解体していくその過程をみながら、Tさんの経営能力のなさ、経営感覚のなさを批判する。何か上から目線で、文化には理解があったのに、商業者として経営者としてのTさんをダメだったと断罪するその姿勢そのものに、ぼくは強い違和感をもった。
上○さんは、いったいいつSのお客さんだったのか。消費意欲を駆り立てられない、少なくともその意識、無意識の希薄な人間が、一方でハイカルチャーを享受し礼賛する、そして、その落差に失望する、この構図自体が、僕にはとてもインチキ臭くみえてしまうのだ。しょせんは、学者の目線でしかないな、という感想。毛○君も、同じようなことを言っていた。上○さんは、グッチもビトンももってないし、興味も関心も薄いんじゃないかなぁって。だから、この研究会でそこを埋めたかったのだ、僕としては。
しかし、こういう気持ちは、じつは内部の人間は、むしろあまり本気で思っていなかったようだ。内部の人間は、逆に世間のSに対する評価と内側の評価のギャップに戸惑っていたのだ。Sは暴走していた。プロジェクトを起こす時、これならTさんは喜ぶ、これはSぽい、もっとラディカルじゃないとTさん的じゃない、といった言動が内部ではいきかっていた。でも、それはTさんの真意ではなかった。周囲の人間たちがかってにT像をつくり、S文化幻想をつくりあげてしまった。そして、それにみずから振り回されていく。Sグルーブの代理店にもとんでもない勘違いオジサンがいた話。みんな暴走していて、その暴走をTさんも見て見ぬふりをした。その意味では、Iさんも暴走組の一人だった。
香○さんは、S文化に幻惑されていた。「決してサブカル好きを喜ばすだけがSではなかったのに、香○さんはまちがっているな」という人が案外いたらしい。だが、僕から見れば、外の人間の多くは、香○さんと同じように見ていたんじゃないだろうか。みんな幻惑されていたのだ。
そういえば、弊社のKちゃんのお姉さんをIさんと取材したことがあった。彼女もS文化に幻惑された一人で、その夢を実現させたくてSに就職する。いつか文○事業部への異動を希望しつつも、結局、SYの紳士売り場の店員に甘んじざるを得なかった。そういう社員がたくさんいたはずだ。毛○君の見方も、決して内部の声を反映しているものではないように思う。だからこそ、内部と外部の境界を取っ払って、S文化を正面から研究してみたかったのだ。それもかなわぬことになりそう。再びこのメンバーで集まれることをただただ願っている。