伊奈英次さんの個展「IN TOKYO+EMPEROR OF JAPAN」のオープニング。伊奈さんは、『談』no.67「リスクのパラダイム」で特別企画として世界の監視カメラを逆に監視=撮影した「監視」の連作を掲載。それ以前にも一緒に旅したキューバ、ブラジル・マナウスをno.47「ラテン…解放の思想」、no.48「別冊談 混合主体のエチカ」でを発表している。『談』とは関わりの深い写真作家の一人だ。

今回は彼の初期の代表作「IN TOKYO」のヴィンテージプリントの20年ぶりの展示と最新作「EMPEROR」のお披露目展覧。「EMPEROR」は、天皇陵、全124代を踏破し撮影した壮大なプロジェクト。なんといっても、さぬのみことかむやまといわれひこのみことはつくにしらすてんのう=神武天皇の陵墓から始められているのがいいではないか。歴史上実在しない存在、まさに忘却の忘却、不在の不在を光によって捕獲し写像化する試み。「国家は一つの光線だ」と、ぼくの大好きな劇作家は言い放ったけれど、静かにたたずむ墓の数々は、光にならんとして物質化してしまった国家という形象そのものだといえる。それにしても、政治的な空間を撮影させたら、伊奈さんの右に出るものはいない。むろん、ドキュメンタリーのランガージュは一切使用されていない。徹頭徹尾、光線の コノテーション、光量のアーティキュレーションのみでインスクライヴされた二次元世界のポリティックスだ。個展は→gallery artunlimited

また、 10月31日からは「ZEIT-FOTO SALON」で伊奈英次作品展「EMPEROR」が開催される。