GDは、ある女性の質問に、「哲学をすることだって? それは、とても難しいことだ。簡単にできるものではないよ」と応えて、こう続ける。「絵画には二種類ある。肖像画と風景画だ。両者は根本的に異なっている。喩えるならば、哲学史とは肖像画。モデルと正面から対峙し、凝視することで、そのモデルの在りように接近していく。それに対して、風景画とは、アプローチそのものがまったく異なるのだ。風景画とは、何かをつくりあげること、純粋な制作行為である。哲学とは、この風景画のことだ。概念をつくるとは、そういうことであり、そうやすやすとできることではないのである」。
GDは、またこんな言い方もした。「絵画はずっと単色だった。それがある時から色を持つようになった。それは、絵画にとってとてつもない革新である。色を見ること、色を探し出して、色をつけること。こんなことは、ふつうでは絶対にあり得ないことだ。それほど、色というのは重要でありかつ概念に近いものなのだ。したがって、絵画が色を発見したことによって、はじめて哲学の領域に足を踏み込むことができたのである」。今日のGDは、まるで、ゴッホのドゥーブルだった。だがもしも、DGだったら、間違いなくそれはベーコンに替わっていただろう。