美術作家の山本基さん来社。お住まいの金沢の金つばをお土産にいただく。たばこと塩の博物館に行き、それならむしろぼく経由で塩事業センターの大庭さんに聞いてみるのがいいんじゃないか、という助言を受けたとのこと。さっそくtelする。何年ぶりかで話をする。彼は茂木健一郎さんのブログを読んでいて山本さんの仕事は知っていたのこと。それならことは早い、スポンサーになれるかどうか、その辺りのことをお願いしに山本さんと会ってはくれぬかと頼むと、二つ返事でOK。なにせ、大きなインスタレーションになると7トン近い塩を使うという。これまで、会場側が用意できない場合は、自腹切っていたというではないか。作品の製作には、精製塩がかえっていいともおっしゃる。塩に水を混ぜて電子レンジに1時間以上いれておくと、カチンカチンにかたまる。それをブロック状にして、積み上げていくらしい。大きな作品になると、それを何百個と作り積み上げていくわけだ。
初めて、床に塩でつくられた細い線がマンダラのように張り巡らされた「迷宮」を見た時の衝撃は忘れられない。しかし、この塩のブロックを積上げてつくられた巨大な階段「空蝉」には、人をして深淵に突き落とすような、沈黙の力能を感じる。何より、作品を決定づけている「白」がいい。透明の結晶体が、無限に重なりあってつくり出される塩の白色。ホワイトノイズのメタファといっては身も蓋もないが、物質の将来を予感させる色であることは確かだろう。「人は塩を礼賛する」。生命がやがて物質界を離陸した時に発せられるであろう言葉を、シャルル・フーリエはこんな風に表現した。
人間の行く末を「塩」という物質に託すこと。山本さんの仕事を継続させることが、とりあえずはぼくの持続可能な社会への関わり方の一つなのだ。
山本基さんの作品は山本基ウェブサイト