『談別冊 たばこ』で「チェリー」にまつわるステキなエッセイをお書きいただいた前川麻子さん。彼女の小説『パレット』の主人公は、14歳のフツーの女の子。だが、恋人が30歳のリーマンという想定。歳の差がダブルスコアというのは、今ではそんなに珍しいことではありませんが、自分が30の時に中学生の娘と付き合えたかというと、やはり躊躇したでしょうね。もちろん逆の立場もしかりです。そんなことを思いながら、たまたま北原ミレイの『懺悔の値打ちもない』を聴いたんです。この歌、じつはこんな歌詞なんですが知ってましたか。「あれは二月の 寒い夜 やっと十四に なった頃 窓にちらちら 雪が降り 部屋はひえびえ 暗かった 愛と云うのじゃ ないけれど 私は抱かれて みたかった」。14歳で成人男性と恋愛するというシチュエーションは、別に目新しいことではなかったんだって、あの慟哭ともいえる歌声を聞き入りながら思いました。結局この女の子は、十九歳で捨てられて、細いナイフを持ってその男の帰りをまち続け、懺悔の値打ちもないけれど、打ち明け話を聞いて欲しいと言って、歌は終わります。わずか3分半の中に女の性が凝縮しているすごい歌。この歌をつくった人はというと、先日亡くなった阿久悠さんでした。やはり、この人はただ者ではなかったな、とつくづく思ったのでした。
トラックバック一覧
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1. パレット 前川麻子
- [粋な提案]
- 2010年11月13日 01:04
- 大人の事情は複雑でいい加減でたちが悪い。大人じゃないから分かることも、いっぱいある。それぞれの事情を抱える、今どきの優等生でも劣等生でもない少女たちの姿を描く。 渋谷区の公立中学に通う十四歳の尚...
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