8時45分に集合場所の駒場アゴラへ。POTALIVE駒場編vol2『LOBBY』「燈ともしび」に参加するため。これは、一言で言うのはむつかしいのだが、お散歩しながらお芝居を観るパフォーマンスである。
駒場アゴラのある商店街では盆踊りが行われていた。クルマ1台やっと通れるような商店街に老若男女がたくさん集まっている。浴衣姿も多い。お店の前で焼きそばを売っていたり綿飴や金魚すくいの屋台が出ている。
受付開始。サロンのような場所のテーブルの前にいた青年が主宰者の岸井大輔さんだった。案内用のフライヤーの入ったビニール袋と、POTALIVEの参加者であることを示すシールをもらう。それを次回持参すれば、200円で入れるという。つまり1回600円! なんと安いことよ。
キャンセル待ちも加えてたぶん13人の参加者。今回の案内役、村井美樹さんがあいさつ。村井さんは、現在ドラマ「麗しき鬼」や「アニメギガ」の司会で活躍する女優さん。浴衣がよく似合うステキなお譲さんだ。さっそく商店街に繰り出す。盆踊りは終わったばかり。商店街はまだその余韻が残っていて、すぐには帰らずにまだ多くの人々が残っている。村井嬢の話がゆっくりと始まる。
彼女の生まれは京都。24日は、ちょうど地蔵盆の日。京都の町にはそこかしこにお地蔵さんがあって、子供の頃によくお地蔵さんにお参りしたという。駒場にはそんなに多くのお地蔵さんはないけれど、同じくらいの消火器がある。こんなに消火器が置いてある町は珍しいらしい。なぜそんなにたくさんあるかというと、じつは、駒場は大火事に見舞われたことがあるからだ。駒場1丁目で1998年に発生した火災。22棟が被災、10棟が全焼という大火災だった。そんな話をしている時に、よく見ると消火器にお参りをする女性がいるではないか。そう、すでに芝居が始まっていたのだ。
そんな話を続けながら商店街の裏側の細い路地を進む。この路地、じつは目黒川の支流の一つ空川(駒場野公園と東京大学駒場キャンパス構内の池を源とする)を暗渠にしてできた道。人一人歩くのがやっとのような路地が緩く蛇行してどこまでも続いている。途中から階段を上っていくと、見晴らしのよい場所に出る。真向かいに京王井の頭線が見える。駒場という町は、井の頭線・東大駒場と今立っている1丁目の間の谷の部分、つまり空川にそって開かれた土地だったのだ。
村井嬢は、その火事の出火元が丙午のぱあさんの家だったことを明す。この丙午のばあさんは、暗渠になる前の空川にかかる敷板をよく歩いていたらしい。そしてきまってその時宮沢賢治の「星めぐりの歌」を口ずさんでいたという。そして、村井嬢は駒場保育園の前でその「星めぐりの歌」を歌ったのだった。透き通るような、とてもきれいな声だった。
わわわれは再び引き返し、火災現場跡の斜面地につくられた防災公園横の階段にたどりつく。ここでまた、村井嬢扮する丙午のばあさんの寸劇。気が付くと着物を着た青年が「おいでおいで」をしている。彼の差し出すロウソクを受け取り、みんなはその後をついていく。井の頭線のガード下に出ると、今度は獅子が待っていた。突然始まる獅子舞。通行人がけげんそうな顔をして通り抜けていく。そして、その獅子に促されて気がつくとアゴラ劇場前に着いていた。
きっちり一時間のお散歩ライブ。町こそが物語であり、物語は町から始まる。「世界は演劇によって再現できるか」ブレヒトの言葉を思い出した。