早稲田大学理工学術院教授で同大学都市・地域研究所所長・佐藤滋さんのインタビュー。卒業制作の時期なので、エレベーターを出ると、床につくりかけの作品(模型)がたくさん置かれている。足の踏み場もない状態。佐藤先生には、「ジェイコブスの宿題」で、具体的なまちづくりに引き寄せてお話しいただいた。風土や地理的な環境を活かしたかたちで発展してきた日本の町は、ジェイコブスの暮らしたアメリカや都市の理想としたヨーロッパのそれとは大きく異なる。また、すでにそれぞれの町には地元に根をはやして活動する多種多様なまちのプレーヤーが育っている。ジェイコブスが批判した60年代のアメリカとは、社会的な基盤も違っている。日本的な自然環境を活かした、日本独自のまちづくりをよりいっそう進めていくのがよいという結論。今日はカメラマンに徹していたので、細かい議論は聞き逃してしまったが、たぶんこんな話だったと思う。西武線沿線はなじみがないが、沼袋の他に、新井薬師、野方、都立家政、鷺宮の立体化にあわせて、それぞれの地域でまちづくりが進行している。なかでも、沼袋はがんばっているらしい。
午後は、『談』のデザイナーの河合くんと待ち合わせて東大駒場の生産技術研究所へ。ERATOのオープンラボで、ERATO合原複雑数理モデルプロジェクト技術員・木本圭子さんを訪ねる。倉庫みたいでしょ、と案内されたラボは、なんのなんのステキな工房だ。文化庁第10回メディア芸術祭アート部門大賞(最高賞)になった受賞作品のデモを30インチのモニターで見せていただく。いろいろ話を聞いていたら、じつは最近こんなのつくっちゃったのよ、と奥からもってきたのがなんと立体作品。これが面白い。数理と式の深い森を抜けると、花々が咲き乱れる広い庭に出たという感じ。彼女は、いよいよアートの世界に着地した。しかも今度はカラー。種を明せば、やはりこれも数理が生み出した花園。ますます加速度が上がっている。これを素材にした作品を提供してもらうことで合意。77号の『談』は、いつにもまして、表紙と中のヴィジュアルが強力だ。乞うご期待。