京都・佛教大学社会福祉学部社会福祉学科教授・神谷栄司さんにインタビュー。神谷さんは、ヴィゴツキー研究という立場から、「遊び」のもつ意味や特質について言及されている。そこで、ヴィゴツキー理論の一つの重要なポイントである「遊び」とは何かを明らかにし、さらに世代や年代を越えて、普遍的な「遊び」論へ拡張してほしいというのが、今回のインタビューの趣旨である。
神谷さんは、17年間に及ぶ保育現場の観察経験を踏まえた上で、ヴィゴツキー理論の咀嚼と深化に向かった。特に、新たに発見された晩年の手稿「情動の理論」の翻訳を導きにして、これまでヴィゴツキー理論の柱とされる「内的意識の心理的発展」という「内言語」と「意味」の問題、「ペルジバーニエ」という概念に集約される「人格発達論」に加えて、「情動理論」に表れた「心身論」に注目し、その三つの柱の相互関連性を研究されている。「情動理論」は、スピノザの心身論に依拠するもので、『談』の「情動回路」の論点でまさに重なるものだ。「書物のフィールドワーク」にヴィゴツキーの手稿は載せていたのに、未読だった。こんなことなら読んでおくんだったなぁ、残念無念。
ヴィゴツキーの著書『思考と言語』はミハイル・バフチンの文学理論と共鳴するところが多いと近年いわれている。一方『情動の理論』は、スピノザ思想と親和性をもつ。この一見異なる相貌をもつヴィゴツキーは、どこでどうつながっているのか。いわゆるバフチン的側面とスピノザ的側面の共存。神谷さんのもっかの関心事だ。バフチンのラブレー論に見られる「笑い=饗宴」は、スピノザの「喜び」と関連性があるようにも直感的には思うけれど、確かに、これは面白い問題かもしれない。ヴィゴツキーの発達論が、マルチリンガルの思想と、スピノザのコナトゥスまで取り込むような射程をもっていたとなると、思想的には大変な発見となる。興味尽きない問題だ。神谷さんの研究に大いに期待したい。(何だか岡田さんの時とにているな)。それにしても、神谷さんはなんと人のいい方だろうか。新留さんではないが、こちらのつたない質問にも丁寧に対応してくれるし、なにより話がわかりやすい。終始微笑みを絶やさず、やさしく話しかけてくれるのであった。さすが佛教大学? それは、違うって(一人ツッコミ)。