TASC会議室にて、「科学と疑似科学どっちがホントっぽい? ……科学的正しさの機能不全」というテーマで鼎談を開催。出席者は、東京大学大学院教育学研究科教授・金森修さん、名古屋大学大学院情報科学研究科教授・戸田山和久さん、帝京大学経済学部助教授・小島寛之さん。
疑似科学が蔓延している現状を確認したうえで、何がそういう状況を生み出しているのか、その問題点は何か、さらには、何が今必要なのか、自由に議論していただいた。
科学者側にその責任の一端があるのならば、科学者も反省し、市民への啓蒙活動も大事だとするしごく正当な意見が出たが、それは科学の問題というよりは、社会の方にこそ問題があり、必要なのは合理的な判断ができるシステムづくりという意見も出た。また、疑似科学を鵜呑みにしてしまうような頭をつくってしまう現在の教育にこそ問題があるという批判も出た。
個人的に興味をもったのは次のような発言。科学者は、科学はここまでしかわからないということをよく知っている。わかりたいと強く思っていても黒白がつけられないのが科学者だ。ところが、何かわからないことがあるとメディアは、科学者を引っ張り出してきて結論を迫る。メディアが科学者に期待するのは、「まだわからない」という消極的なコメントではなく、「専門家からみてそれは絶対に黒(白)だ」という断定だ。科学というお墨付きを得た上で、さらにサプライズが期待される。そのため科学者は、時に疑似科学者の役を演じさせられてしまう。疑似科学の蔓延には、テレビの影響があるのではないか。ほかにも、背景には科学政策と予算配分のゆがみが生み出した現象、官僚の科学リテラシーが低すぎるのが原因という辛辣な批判も。じつに有意義な鼎談となった。来年発行の『TASC monthly』に掲載を予定している。乞うご期待。