渋谷の紀伊国屋書店で『ユリイカ』別冊、『稲垣足穂』特集を購入。青土社の郡さん渾身の編集。これまでにない特集になっていて面白い。で、びっくりしたことがひとつ。足穂の資料の収集家として登場するKさんがパテェ映写機を畳に並べている写真が載っていた。それで思い出した。僕が学生時代につくっていた『三番館』というミニコミで足穂特集をやった時のこと。生前足穂のうちに遊びにいった谷利男君に寄稿してもらった。その原稿に、足穂の桃山のご自宅でこのKさんと会った話が載っているのである。谷君と何度か会った時にも、パテェ映写機をかかえてやってきたKさんのことを、楽しそうに話してくれた。あ〜、あのKさん、こんなかたちで再会することになるとは。ところで、谷君その後ぜんぜん会っていないけれど、今もどこかで、やはり足穂しているのじゃないかしら。ちょっぴりなつかしい。なんといったって彼は、いろんな意味で足穂してましたから。いや、松岡正剛さんにいわせれば、それは足穂じゃなくて三島だろ、か。
この足穂特集、ブックデザイン(書容設計と明記されている)は羽良多平吉さん。これがまたものすごくいいのだ。円錐形のオブジェをアイコンに使ったのは、足穂ファンにはすぐに頷けるところだが、にくいのは、ところどころにつく写真の captionがちょっぴり傾いているところ。おもわずうなってしまった。これ、完全にチョコレットの世界ですよ。表紙にタイトルが載って目次裏から始まってしまう小品「タッチとダッシュ」の展開なんて、もう カッコよすぎ!!