Taka ishii Galleryへ。畠山直哉さんの個展「Zeche Westfalen /II Ahlen」を鑑賞。畠山さんの今回の個展は、ドイツ・ミュンスターの街Ahlenにある操業を停止していた工場の解体までの様子を撮影したもの。一昨年、畠山さんの暗室をお訪ねした折に一部を見せていただき、早く展覧会をやらないものかと待ちわびていた作品です。畠山さんとは、一緒に1999年にドイツ・ノルトライン・ヴェストファーレン州で開催されていた「エムシャーパーク」プロジェクトを撮影して歩きました。すでに役割を終えたいくつかの巨大工場群を保存・再生し、公共、民間施設として再利用するというプロジェクトに、ぼくたちはおおいに刺激されました。とくに「インダストリアル・ネイチャー」という概念が新鮮で、溶鉱炉が近代の自然観を表象しているという視点には説得力がありました。「また行きたいね」と畠山さんと会う度に話していたのですが、彼はこっそりと同じようなプロジェクトをすでに撮影していたわけです。暗室でその写真を見て、「あっずるい!」と一瞬思いました。でも、作品があまりによかったものですから、ぼくなんぞが行っても何もできないし、畠山さんがこうして写真に残してくれたのだからいいでしょう、とすぐに納得しましたけどね。それしても、今回のはすばらしい。工場が爆発、解体する瞬間を捉えた一連の作品もいいのですが、壊される前の無人の工場内部の写真が群を抜いていい。畠山さんの視線は、工場の記憶を、そっくり記憶のままに記録しようとしています。ドキュメントとは、記憶を残すのではなく、記録を残すもの、というなんとも当たり前の事実をぼくたちに教えようとしているように思います。「記録写真」というものに、あらためて出会えた気がしました。畠山さんは「記録は、未来に属している」なんてかっこいいこと言ってます。確かにそれは正しいかもしれないぞ、と思わせる写真展でした。
「Zeche
Westfalen /II Ahlen」

taka ishii galleryで7月22日(土)まで