カイヨワが再びマイブームの気配。『遊びと人間』を読み返したら、まったく色あせていないことに驚いた。競争(アゴーン)、運(アレア)、模擬(ミミクリー)、眩暈(イリンクス)という四つの象限から遊びを分類する。これは、覚えていたのだが、これにパイディアとルドゥスという軸が加わることをすっかり忘れていた。四つの象限が横軸に並ぶとすると、一方の極をパイディア、それとは反対の極にルドゥスのある縦軸が置かれる。パイディアとは、無制限で無秩序な気まぐれ、熱狂、陶酔。ルドゥスとは、故意に窮屈なルールを設けることによって欲求の度合いを高めるもの。両者は、それ自体無意味で有用性のないものでは共通するが、完全な自由による快の方向をめざすものか、あえてハードルを高くすることでより強い快をめざすかという違いがある。パイディアが喧噪や混乱、乱痴気騒ぎだとすれば、スポーツやゲームがルドゥスになる。
たとえば、さまざまな嗜好品をカイヨワの四つの象限に分類してみる。そして、パイディアとルドゥスという軸から見直してみる。すると、とてもおもしろいことがわかった。嗜好品というものが消費社会のなかで、アゴーン的、ミミクリー的な位置からアレア的、イリンクス的な位置へと移動し、パイディア的な要素を失う代わりにルドゥス的なものを獲得しつつある、ということが見えてきたのである。まだ思いつき程度にしかすぎない。しかし、何かピピーンときた。この嗜好品の重心の移動、じつは大きな地殻変動が起こりはじめていることを示しているのではないか。消費という概念、消費社会という枠組み自体の変質を意味しているのではないかということだ。まだうまくいえない。もう少し考えてみよう。