今福龍太さんの「リングア・フランカへの旅……〈自由な舌〉を求めて」の連載が「en」 にて始まりました。LIgua francaとはラテン語で共通語を意味しますが、舌が言語と食の両方にかかわるという事情を込めて、今福さんは「自由な舌」と意訳しました。「自由な舌」、なんともステキな言葉! これから、この舌が、さまざまな場所に出没し、さまざまな言語と出会い、さまざまな食と交歓し、さまざまな「生のかたち」を見出していきます。そもそもこの企画、数年前に「世界料理宣言」というテーマでぼくが今福さんはインタビューをしたのが発端です。今福さんは、そのインタビューで「ぼくは分節化される以前の舌がどんなものだったかということをずっと考えている。それは主食の舌のことです。料理というのはおかずのことで、主食の舌を無視している! 」とおっしゃった。「えっ主食の舌だって?!」。じつは、ぼくも同じことをずっと考えていたのでした。おかず=グルメの舌の陰で、今ではすっかり小さくなってしまっているもう一つの舌。それこそが主食の舌です。主食の舌は、食の原理原則に忠実です。つまり、「保守的ってこと?」 いやいやまったくその反対。主食の舌こそ、類い稀なる多様性をもった自由な器官なのです。普遍性と多様性を同時にもつ言語と、それはまったく同形なのです。食と言語が口腔内にセットされた舌によってもたらされるという事実。この偶然を、ぼくたちはもっと注意する必要があります。今福さんの新しい連載は、まさにこの主食の舌の解明へと向かう、あらたな思索の旅でもあるのです。期待しましょう。「en」4月号には、他に金森修さんの「ビッグブラザーの、自由な末裔」を掲載。今後、続々と『談』でインタビューなり対談した人が登場しますので、こちらもこうご期待!!
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