横浜の朝カルで作家の楠見千鶴子さんから依頼していた原稿をいただく。やった!! 神楽坂山田製の400字づめ原稿用紙に万年筆書き。物書きの原稿はこうでなくっちゃ。さて、原稿はというとこれがとても面白かった。「葡萄の樹・狂気の神ディオニュソス」というテーマで、酒神といわれるディオニュソスはそもそもどのような神だったのか、ギリシア神話に則して紹介してほしいとお願いした。その内容は本誌で読んでいただくとして、ひとことだけいうと、ディオニュソスは生まれながら酒神だったのではなく、もしかすると神という存在であったかどうかも疑わしいというのである。その生誕から成長過程に至る過酷な神話(八つ裂きにされ殺され、母を替えて再生する)は、極端にディフォルされた人間社会そのものかもしれない。ディオニュソスという存在が「酒」のもつ両義性、陶酔性をじつによくあらわしているのだ。楠見さんの原稿が入ったことで、いよいよ「アルコオロジィ」らしくなってきた。