大阪中之島のリーガグランドホテルにて鷲田清一さんと茂木健一郎さんの対談。
鷲田先生、18時ぴったりに到着。先生は1階フロアのソファの横に設けられた喫煙スペースに直行。ご挨拶。個室でたばこを吸うとみなさんに迷惑だから、ここで一服していくとおっしゃる。ありがたいご配慮だが、今回はTASCのお二人も斎藤さんもそして茂木先生も喫煙者。どうぞ遠慮なくお部屋でお吸い下さいと伝える。茂木先生30分遅れて到着。さっそく対談をはじめていただく。鷲田さんと茂木さんはお会いするのは今回が2度目。山本耀司さんのパーティーで一度お会いしているとのこと。鷲田さんは、その時の様子をとてもよくおぼえていらっしゃった。というのも……。
茂木さんは、山本耀司さんに会うなり、「うわ、背が低い」とおっしゃって、紹介した鷲田さんを慌てさせたからだ。茂木さんらしいエピソード?! 対談、まず、鷲田さんが口火を切る。鷲田さんは、これまで長い間原稿をほろ酔い加減で執筆していたという。夜半から朝方にかけて、ウィスキーで口を湿らせて書くのが鷲田さんの流儀だった。さすがに最近は、それができなくなりましたと笑っておられたが、これまでわれわれが読んできた鷲田さんの文章のほとんどが、そうやって生み出されてきたものだった。茂木さん、それで合点がいったと。以前より鷲田さんの独特なリズムをもった文体がどうやって生まれるのか、ずっと不思議でならなかったという。その謎が氷解したからだ。「それがわかっただけで、今回の対談は十分意味がある」と茂木さんひとりで納得。実際その後、対談はあっちに跳びこっちに跳びして、肝心の酒の話(そう、今回は酒の対談だ!)はちょびっと出るくらい。茂木さんの納得の二つ目。愛撫とは、まず相手を悦ばせるためにするもの。自ら皮膚感覚を自覚するのはその後だ。自分の快感の欲求の前に、まず相手の快感が優先する、と茂木さんはずっと思っていた。ところが、鷲田さんもギャラリーもそれは逆。まず、自分の感覚が先に優先して、相手の快感はその後じゃないか、というと、茂木さんはとても驚いた。青天の霹靂。茂木さん的には、この二つが今回の収穫だったらしい。で、そのあと対談の主題は、いよいよかすんでいった。レストランに場所を移して第2ラウンド。しかし、ここでも酒の話題が中心にはならなかった。それでも、人間における口のもつ意味とか味覚の謎とか、面白い話題が鷲田さんから出される。が、茂木さんそれを次につなげてくれない。そんな感じで、第2ラウンドも終了。これどうやってまとめたらいいんかい。対談終了後、鷲田さんから「もう一杯のみませんか」とうれしいお誘い。曾根崎新地にある「パパ・ヘミングウェイ」へ。ホテルから徒歩10分、ステキな店だ。ママは詩人でもあるという。ウイスキーを楽しみながらいただいたおつまみが美味しかった。とくに自家製ピクルス。大好きなカリフラワーがなんとも美味。(本人曰く)これ以上ないくらいに覚醒していたという茂木さん、やはり、酒は語るものではなく飲むもの、っていうことですか。