今、ワインの世界で何が起こっているのか。ボルドー、ブルゴーニュ、ナパ、トスカーナ、アルゼンチンと世界各国のワインの現場を巡ったドキュメンタリーフィルム「モンドヴィーノ」を見る。グローバリズムかテロワール主義か。ワインコンサルタント・ミシェル・ロランとワイン批評家・ロバート・パーカーの出現によって、ワインづくりは根底から変わってしまったのだ。世界基準の美味しさを求め、同時に付加価値の高い高級ワインをつくる作り手と風土に根ざしその土地の固有性にこだわる作り手との、国家や地域を越えた闘いが始まっている。農産物という本来地域性の代名詞のような商品が市場経済に組み込まれた時にそれまでとはまったく異なる意味をもち始めるのだ。地域性は唯一無二のブランドでもあるが、同時に自らをノンマルケ(無印良品!)なグローバルスタンダードに開放していくことでもある。農産物とはその意味で、市場が成熟化していく過程で、グローカル(グローバルかつローカル)になることを最初から運命付けられた商品なのだ。つまり、ワインとは矛盾そのものなのだ。ワインもしくは酒の資本主義的展開。この映画は、嗜好品の未来を考える、絶好のテキストになる。