NHKスペシャル「立花隆 最前線報告 サイボーグ技術が人類を変える」を見る。神経工学の急速な発達がこれまでSFの世界の話だと思われていたことを現実化しつつある。たとえば、両手を失った男性が人工の腕を手に入れて動かし、また、完全に視力を失った男性が人工の眼で光をえることができるようになる。いわゆる身体の一部を機械が代替するサイボーグ技術は、それでもそのうちできるだろうとは思っていたからそんなには驚かなかった。それよりなによりびっくりしたのは、脳と機械を直接つなぐシステム・サイボーグの技術だ。パーキンソン病で苦しむ患者さんの脳(運動を司る領野)に直接電極をさす。そして、それを読み取り、コントロールすることによって、薬でも治療困難だった病気があっさり治ってしまったのである。
それまで手足が痙攣し歩くのも用意でなかった女性が手術台にのぼる。部分麻酔をした患者本人と話をながら脳に電極を埋め込んでいく。そして電圧をかけると、なんとずっと小刻みに震え続けていた手足がぴたりと止まってしまった。しかも、グーチョキパーまでで難なくできてしまう。まるで奇跡を見るようだ。パーキンソン病のアメリカの男性は、脳へ24時間電極から電気信号をあたえ続けることで、日常生活を普通に行えるまで回復する(といっても病気そのものが完治するわけではないが)。彼は、胸に埋め込まれたスイッチをリモコンで停止する実験をする。スイッチが切られて電気刺激が送られなくなるとみるみるうちに手足が痙攣を始める。言葉もうまくしゃべれなくなる。再びスイッチを入れると、あっとうまにまたもとの正常な状態にもどった。鬱病の患者も同じように脳内の悲しみを司る領野に電極を入れて刺激することで回復してしまうのだという。さらに驚くべきは、こうしたブレイン・マシン・インタフェイスの技術を軍事に応用する実験がアメリカで始まっていることだ。ロボラットという電極をうめこまれたネズミが、人間のコンピュータ操作によって、右に左に自由に動かされてしまうという様子が映し出された。また、身体機能をまったく失った男性が、脳内の命令だけでテレビのスイッチを切ったり、コンピュータのカーソルを動かしたり、果ては、離れた場所に置かれた人工の腕を動かしたりするという実験もやった。そして究極が海馬チップ。記憶をチップにセーブし、記憶自体を読み出したり書き込んだりできるようにするという技術。すでにこの実験も始まっている。いったいいつからこんなことになっていたのか。どうやら、気がつかなかったのは無関心だったからだけではないらしい。こうした神経工学の爆発的といっていい進化は、ここほんの5、6年のことなのだという。前世紀末までは、まったくといっていいほど注目されていなかったというのだ。ここではっと思った。神経工学が例のICカードやICチップ、生体認証の技術と結びつくとどうなるのか。われわれもはや予想できないようなところへ着実にむかいつつあることだけは確かなようだ。11月9日(水)午前0:15から再放送あり。HP「SAI
」では、さらに詳細な記事が掲載されている。
」では、さらに詳細な記事が掲載されている。
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