TASCの講演会へ。国立民俗学博物館名誉教授・栗田靖之さんの「たばこ販売禁止に踏み切った国ブータン」と元駐スペイン国大使・林屋栄吉さんの「スペインとたばこと私」。ブータンは、2004年12月17日国内でのたばこの販売を禁止しました。ブータンは人口50万人のうち喫煙者はわずか1パーセントしかいないという非喫煙国。それなのに、なぜ世界初ともいえる販売禁止という厳しい規制を行うに至ったのでしょうか。結論からいうと、仏教の影響で禁煙が定着している中で、都市部の若者を中心に喫煙者が増えてきたため。ブータンでは、GNPに対抗して、国民総幸福(GNH=Gross National Happiness)を提唱しています。健康を維持することが幸福につながると考え、結果、病気の原因となるたばこは禁止すべし、ということになったというのです。GNHの考えは、とても面白い概念だけど、そもそも幸福を量ではかることができるのかどうかという根本的な疑問があります。精神的な幸福感を最も上位に置く仏教国だからこそ通用する概念で、普遍性はもちにくいと思うけど。そうやって販売を全面禁止したのに、仕掛人の国王はというと大の喫煙擁護派。喫煙を今でも続けていると公言しているとか。こういう話、僕は大好きですね。
もう一つは、つい先頃TASCで翻訳出版した『タパカレラ スペインたばこ専売史 1636-1998』の監修をされた林屋栄吉さんの講演。この本にひっかけてスペインの歴史を、たばこに絡めて話されました。スペインの国際日は10月12日。この日は、国王の誕生日でも建国記念日でもなくて、コロンブスが新大陸を発見した日。この事実は、スペイン国民にとってラテンアメリカとの出会いがいかに重要なものであったかを証明しているという。この日はまた、ヨーロッパが初めてたばこと出会った日でもあります。林屋さんは、いっそ10月12日をたばこの日とすればよかったとおっしゃった。この日に限って、あたりかまわずプカプカ吸いまくれる日とかね。今じゃ絶対無理だけど。林屋さんはスペイン、メキシコ、アルゼンチンの大使館に勤務し、駐ボリビア・スペイン特命全権大使も勤めておられます。なにを隠そう、いずれの国も僕行きました。ペルーとかキューバとかブラジルも。スペイン語もポルトガル語もできないのに、ラテンアメリカが好きなもので。そういえば、たばこは吸わないのに、ペルーではコカをやりました。あれは、ラテンアメリカの香りだったなあ。あっ、ジャマイカでは○○○○もやったっけ。あれは、アブない香りだったけど。
関西で嫌煙運動について講演会ができないかな、と考えていまして、森岡正博さんと小谷野敦さんではいかがかと、知人と笑い話しております。