エンテツさんこと大衆食の会代表・遠藤哲夫さんが来社。発刊されたばかりのちくま文庫『汁かけめし快食學』を贈呈していただく。これは、エンテツさんを一躍有名にした名著『ぶっかけめしの快楽』(四谷ラウンド、1999年)の増補改訂版。なにを隠そうこの本の第1章「かけめし屋始末」に出てくるマコトなる人物は編集子のこと。エンテツさんは私のかつての上司だったのです。エンテツさんをお呼びしたのは、食と言葉の関係を探るプロジェクトを始めたからです。

汁かけめし快食學

汁かけめし快食學
今回とりあげたのは「コク」。てっきり「コク」って「濃く」だと思っていたら「酷」が語源でした。『調理用語辞典』によると、「こまやかで深みがあり口中にひろがる味わい」がコクだとあります。一般の食べ物に使用された例は比較的新しいようで、面白いのはとくに加工食品の味覚表現によく使われるようです。加工食品が一般過程に普及していく過程で、コクという表現も使われ出したようなのです。そして、そのきっかけになったのが「コクがあるのにキレがある」というアサヒ・スーパー・ドライのCMコピー。コクの使われ方を探ると、戦後、とくに80年代以降のいわゆる「一億総グルメ時代」、私たちが食べ物にどんなイメージをたくしてきたがボヤッとですが、見えてきます。甘酸辛苦渋の五味をさらに下から支えるもの。「コク」はそれまでの乏しい食のボキャブラリーを一挙に広げるきっかけになったように思えますが。いや待てよ、これってもしかするとあのアミノ酸のこと? だとしたら、○○の素ではないですか。だから、加工食品……。う〜ん、日本人が美味しいと感じるのは、結局のところ○○の素の味のことなのかしら?