発生生物学の研究者・団まりなさんを塩事業センターのOさんと館山のご自宅に訪ねる。ご自宅は、海から300mぐらいのところ。目の前には水田が広がり小川が流れ、背後には小高い山が連なる。典型的な里山の風景だ。団さんは、大阪市立大学を退官されてすぐに、ここに引っ越してきたという。今は、悠々自適で学究生活を送っておられる。『談』でインタビューをしたのは95年、進化論の特集をした時だから10年前だ。今回は、履歴を交えながら、現在とり組んでおられる研究についてお聞きした。団さんは、現象としての生物の進化に興味をもち発生学の道に入られた。単純なものから複雑なものへと進化していく、それはなぜかというのが関心の中心だった。それで階層性という考えに出会う。生物の階層性を複雑化の過程として見たうえで、それを生物におけるかたちの階層性として捉える。そして、細胞に注目する。有性生殖とは、ディプロイド細胞が一つ複雑さのランクの低いハプロイド細胞の階層に戻って再びそこから自己をつくり直すこと。ここに生物の本質が見いだされるという。意外だったのは、団さんのこの複雑さの発生学が、生物学ではまだあまり注目されていないことだ。分子生物学、DNA、ゲノム全盛の時代に細胞に注目している生物学者はものすごく少ないらしい。なんということだろう。ポスト・ゲノムを言うのなら、発生学の分野こそ最も重要な領域なのに(小泉義之さんもこの前の対談でそんなことをおっしゃっていたっけ)。ただ、団さんが得意とする細胞の擬人化は、ほかの生物分野で少しとりいれられるようになったらしい。団さんいわく、物理的に記述する方がそもそもおかしい。だって、細胞は生き物なのだから、一匹二匹というのはあたりまえじゃないですか、と。たっぷり2時間半、有意義なインタビューだった。詳細は、「en」の7月号から3回にわたって連載されるのでご期待下さい。
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