島泰三さんの『アイアイの謎』『親指はなぜ太いのか』をきちっと読む。気が付いたこと。サル屋さんの観察という意味。とにかく、徹底的に見続けるのだ。存在が確認できれば、かれらの一挙手一投足をつぶさに観察し続ける。交尾の時には、どうやって雄雌がそれにいたるか。またいたっている間に何回したかとか、とにかく細かく見続ける。
たとえば、こんな記録。
「アイアイが何かを食べているのを観察した時間は17時間少々(1021分)で、ラミー(カンラン科)の果実は、その60パーセントを占めていた。その他には、インシン(マメ科)の樹皮裏(35パーセント)、ムンギ(トウダイグサ科)と呼ばれる木の花の蜜(3パーセント)、昆虫の幼虫(1.4パーセント)だった。モダマ(マメ科)の手のひらほどの大きさの豆もかじったが、これはただ一回観察しただけだった(0.1パーセント)。これらの食物を食べる時刻が、それぞれ少しずつちがっていたことは興味深い。インシンの樹皮裏を食べるのは、午後6時から10時の間に集中し(観察した時間数の91パーセント)、ラミーは午後10時から零時の間(観察した時間数の72.5パーセント)に見られた。(…)アイアイは一度ある食物を食べ始めるとそれをずっと食べていることがあり、ラミーでは、最長111分(1989年9月25日23時〜9月26日0時)も続けて食べていた。(…)ムンギの花蜜の採取は4回観察され、最長22分間(他は7分間と1分間2例)、昆虫の幼虫の採集も4回観察され、最長9分間(他は3分間と1分間2例)
モダマの豆を食べるのを見たのは1回きりで、1分間だけだった」。

しかも、アイアイは姿をあわわしにくい動物で、島さんが調査期間にあてた184日のうち、実際にアイアイを眼で見て観察できたのはわずか33日間。観察時間の合計は48時間30分だったという。もちろん、観察できなかった期間もじっさいには観察し続けていた。
こういうのを真の「観察」というのである。勉強になった。