『はだかの起原』『親指はなぜ太いのか』の著書で日本アイアイファンド代表・島泰三先生の本郷のご自宅へ。さて、インタビューは、まず東大の理学部でサルの研究を始められた島先生が、なぜアイアイの研究へと向かっていかれたのか。謎の多いアイアイの生態を調査することが自分の使命とばかりに、高い志しをもってマダガスカル島へと向かっていったのであった、という答えを期待していたら、「いや〜、〈わくわく動物ランド〉というテレビ番組があったでしょ、あれでなんでもいいから珍獣を撮影してこいっていわれたわけ、ハッハッハ」だって。「え〜、そ、そうだったんですか」。
先生がおっしゃるには、ゴールデンタイムで動物ネタでしかもクイズ形式ということだけが決まっている番組のブレーンに、島先生に白羽の矢が当たったのだそうだ。それで単身マダガスカルに渡り、どこにいるかもわからないアイアイを探し回るが見つからず、結局2度目の渡航でやっとその幻のアイアイの存在を確認した。夜行性であり今までその生態はほとんど知られていなかった。とくに中指だけが細くて異常に長い理由が謎とされていたが、島先生はアイアイを観察し続けて、それがラミーという木の実を食べるのに好都合という世紀の発見をしてしまったのである。島先生の提唱する「主食は霊長類の手(指)と口(歯)の形を決定する」という「口と手連合仮説」立証へのスリリングな冒険は、こうして幕を開けたのであった。いや〜、本当に面白かった。先生の仮説にはもちろん驚嘆するけれど、なんといっても仮説立証の道行きが愉快。武勇伝そのもの。特に生きものを主食との関係から考えるという視点に僕は共感した。食を人類学的に考察した人はいるけれど、生きものの生態を主食から理論化した人はほとんどいない。ニッチの概念を、まさに生態学的に理論付けたのである。インタビューは「en」4月号に、こうご期待。事務所に帰って、小松美彦さんの原稿をブラッシュ・アップして、チェックに出す。『談』のインタビュー原稿では、おそらく最速ではなかっただろうか。やればできるんじゃん。
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