no.73号最後のインタビュー者は東京海洋大学教授・小松美彦さん。55年生まれで、僕と同じ歳だ。短髪でとても姿勢がいい。すでにレジュメを用意してあって、そのコピーを全員に配る。なかなかまめな先生だ。事前につくっておいた僕のメモはこれまで発表したものにそったものだったが、先生のは新しい内容が盛り込まれている。まず先生からまだ発表していないことを今回話してみたいという提案。もちろん大歓迎。インタビューが始まると、これまでとは全く違う展開が待っていた。
先生は、「巨人の星」と「あしたのジョー」の連載開始のシーンの比較から話を始められたのだ。しかも、驚くことにその場面をすらすらすらと、諳んじるのである。一同あっけにとられるが、やがてそれは感動に変わる。いやーびっくりしました。むろん、それはインタビューの趣旨と深く関わっていることで余談ではまったくない。それから、きっちり1時間半、話にすっかり聞き入ってしまいました。自己決定権から人間の尊厳へ。生命倫理の議論はねじれにねじれ、いまや尊厳ということばも方便・空文句になってしまっている。そもそも科学的議論からは「人間の議論」は語れない。小松さんは、そう現状認識をしたうえで、「人間の尊厳とは〈いかなる状態であれ、あなたと呼べる者がそこにいること、あなたと呼ばれることになるものがそこにあること〉であり、まさにそのことが〈いのち〉の体感ではないか」とおっしゃった。また、あらゆる「生きもの」は自己超出する。「いのち」があるとは、その自己超出のことではないかともおっしゃった。今回の特集テーマ「いのちのディレンマ」の核心ともいえる発言だ。雑談になったところで、小松さんは僕とは始めて会ったような感じがしないといい、これ以上話をすると飲みたくなってくる。が、引き続き研究会があるのでやめましょうと。確かに、同じ年齢ということもあってか、大変親しみを感じた。愛煙家でもあるし、今後TASC共々末長くつきあっていくことになるんじゃないかと思いました。
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。