株式会社オリエンタルランドシアトリカル事業部長エグゼクティブプロデューサー・上野幸夫さんの発言(『ぴあ総研エンタタイメント白書』より)が胸に落ちた。 「シルク・ドゥ・ソレイュ シアター東京」をオープンさせるにあたって、ゲストに提供する価値観は、「楽しい」で共通しているけれども、その楽しみの中身は、別なんじゃないかと思うんです。テーマパーク事業の提供価値は”発散型”。それに対してシアトリカル事業は、”蓄積型”。つまり、前者の場合は、ゲストはここにきて全てをリセットしたい、ゼロにしたいという欲求があり、それを満たすためにTDLにやってくる。外界から全く遮断した空間に身を委ねることで、日常の世界を離れたいわけです。一方、後者は、そこに行くことで何か発見をしたいと思っている。行くたび〈来るたび〉に、新しい発見があることを楽しみにしているわけです」。要するに、後者の楽しみとは、そうした発見の経験を蓄積していく楽しみではないか、という。それはまた新たな深堀りでもある。同じ「楽しい」を求めてやってくるリピーターがいても、前者と後者ではその価値観、目的が大きく違うというわけだ。 この分析は、そのまま「まちづくり」にも当てはめられるのではないかと思う。特に観光によるまちづくりを考えているところでは、くちを開けば「リピーターを増やしたい」である。しかし、この伝で言えば、「発散」を求めて再びその地にやって来たのか、もっと「蓄積」したいと思ってまた来たのかでは、全然意味が違う。リピーターの意識がどっちに向いているのか、それを正確に掴まえる必要があるということだろう。単に「二度、三度と通ってほしい」ではダメなのである。