文春発行の『嗜み』第3号収録予定のもうひとつの対談。評論家の三浦雅士さんとエッセイストの川本三郎さん。対談は、川本さんの初期の著作『同時代を生きる気分』ではじめて「気分」ということばで、その時代を語ったその着眼点に三浦さんは敬服したというところから始まりました。

「気分」とは何か。政治運動として語られることがほとんどであった60年代から70年代初期という時代を、人々の暮らしぶりにフォーカスして、生活文化の大きな変化として捉えようとしたのが川本さんでした。そして、川本さんはそれを「気分」という言葉で表現。60年代が、昭和のターニングポイントであったことを明らかにしたのです。

昭和にあって、平成になくなったものは何か、お二人に挙げてもらいました。川本さんは、「らしさ」がその一つだといいます。鈴木清順の「けんかえれじい」で、校長先生の「先生は先生らすく」「学生は学生らすく」という発言に注目し、かつては「らしさ」というものが一つの規範のようなものとしていきていたが、それが失われてひさしいというのです。三浦さんは、さらに進めて「らしさ」を殺したのが平成ではないかと問い掛ける。それから、ちゃぶ台。昭和30年代には、自分の帰れる場所がありました。それが、川本さんにとってはちゃぶ台だったというのです。半面、平成の現代に生き残っているものもあります。服部時計店=和光とホッピー。この二つが奇跡的に残っていることがとてもうれしいと川本さんはいいます。

と、こんな調子で、昭和を肴に、文学、映画、芝居、そして東京について存分に語り合っていただきました。最後に、川本さん、「単なるノスタルジーでなぜ悪い?」と。この言葉、じつはなかなか過激な発言です。お二人とも、もう還暦。「昭和は遠くなりにけり」、とても面白い対談になりました。