三浦雅士さんから朱字の入ったゲラが戻ってくる。それを転記して文春にFAXで送る。『嗜み』第2号に掲載される2本の原稿、三浦さんのインタビューと山崎正和さん鷲田清一さんの対談、これで手を離れた。イレギュラーの仕事だったけれども、今回の仕事は、得るものも多くやってよかった。今は不定期刊だが、来年は季刊化する方向で検討しているという。ぜひそうしてもらいたい。僕の方は、スタンバイオーケーですから。
ところで、香山リカさんから新刊を贈ってもらったが、じつは本書で展開されている問題は、まさに三浦さんのインタビューの中心となるテーマだった。実際、香山さんも三浦さんの著書『漱石 母に愛されなかった子』を引いていて、親子の間にある絶対的な溝を「病」という視点から捉え直そうというのだ。三浦さんがいみじくも言ったように、親子の問題、父と子、母と子の問題こそ、今や最大の難問である。
『談』の次のテーマは「パターナリズム」。パターナリズムはその字のごとく父権主義である。平たくいえば「おせっかい」のことで、子供にとって親は常におせっかいをやく者として存在する。三浦さん、香山さんの問題意識と偶然にも『談』のテーマとニアミスしたのである。それとはともかく、今度この二人で対談をしてもらうというのはどうだろう。というか、『談』でやればいいのか。また一つ新しい企画ができた。

親子という病 (講談社現代新書 1962)