バスティーユ広場の東側ファブール・サン・タントワンヌへ。衰退著しかった職人たちの町を、地場産業を育成しながら保全再生しようというパリのプロジェクト。ここは、昔は解放されていいなかった中庭を歩行空間、公共空間として開放し、通り抜けできるようにした。工場跡をリノベしコンバージョンして、職人たちに低廉で貸すということもやっている。その幾つかを覗いてみた。植生があって、いい空間ができている。古い感じが懐かしさを誘いユトリロの絵から飛び出してきたような風景。
1時間ぐらい見て回り、パリ都市計画アトリエ(APUR)へ。今回最初のインタビュー。調査部長のミッシェル・クグリーエニュさん。来年定年を迎えるいいオジサン。ものすごい早口で、ほとんど切らない。これは通訳泣かせだ。しかし、通訳の佐伯さんと鳥海さんが丁寧に翻訳してくれる。2時間たっぷりお話してくれた。キーワードは「ミキシテ」つまり、混在、混交。『談』のテーマとも共通するコンセブトだ。ぼくも多いに共感する。終了後ベランダに出る。手前にポンピドーセンター、昨日歩いたサクレ・クールが見える。これだけの眺望は周囲にない。ということは、それだけこのビルが邪魔な存在でもあるということだ。都市景観や保存をするParis市の部所のなという皮肉。
サン・タントワンの中庭をもう一度見学。縫製関係の職場の入った工場建築とかおシャレな本屋があったり、修復してうまく使っている。夜は、リヴ・ゴーシュの都市再開発地域の旧圧縮空気工場をリノベした建築家フレデリック・ボレルさんの事務所にいる日本人の若手建築家ヨコオ・ケンタさんをインタビュー。取材の目的とは直接かかわりないが、フランスの建築家の待遇など面白い話が聞けた。それにしても、日本の設計事務所の勤務状況と比較すると、その差にがく然とする。夜7時にはあがって、夏休みが1月以上ある設計事務所(しかも個人の)なんて日本には皆無でしょう。