『city&life』「サイクリング・シティの可能性」に掲載する伊藤滋先生と伊藤礼先生の対談。都市計画家とエッセイスト、伊藤整のご子息にして兄弟。稀な対談だ。礼先生は、古希を前にして自転車にめざめられた。現在は6台の自転車を使い分けながら、都市を走り回っておられるサイクリニストだ。今回の対談は、自転車と都市のいい関係をどうやってつくっていけるかというテーマでお話していただいた。東京というのは、人口や気候条件、起伏の多い地形、どれをみても自転車には不利な条件ばかり。ところが、ヨーロッパやアメリカの大都市と比較すると、格段に自転車普及率は高い。東京のなかでも、足立、葛飾、江戸川、大田の糀谷などが高く、港、渋谷などが低い。高校生と町工場が点在し、4mにも満たない路地がくねくねと入り組んでいる所がじつは自転車利用者が多いという皮肉な現状。これをどう捉え展開するか。滋先生は細かいことは気にせずに、仮説やアイデアをポンポンと出すタイプ。反対に礼先生は、細かいところにこだわる慎重派。兄弟で性格が対照的だったのが興味深かった。ところで、伊藤滋先生は愛煙家。なのに今日の対談場所は全面禁煙。「30分したら一度外に出るぞ」と言っておられたが、結局我慢されて中座することはなかった。帰り際、「先生、今度たばこについて何か書いてくれませんか」と尋ねると、「いやだよ、それでなくてもいじめられてるのに、もっといじめられちゃうよ」ですって。ほんとうにそうかもしれない。こんな立派な先生でも、愛煙家というだけで肩身の狭い思いをしておられるとは。お察しします。