第一住宅建設協会の企画委員会。『city&life』の次号以降の特集企画について。3本企画を提案する。そのうちの一つは、「ジェーン・ジェイコブズとまちづくり」。今年亡くなったジェイコブズ再評価の気運が高まっている。近代都市批判者として、また人間的都市の提唱者としてジェイコブズの思想を受け継ぐ者は少なくないが、彼女はまたすぐれた経済学者という側面も持っていた。国民国家を前提に考えるマクロ経済を批判し、諸都市のネットワークが経済を活性化させると主張。「都市の形成が農村の形成に先行する」というアダム・スミス以来の農業から工業、商業へと発展する経済システムの常識を根底から覆す独自の経済理論を打ち立てた人でもあった(稲葉振一郎)。しかし、ぼくにはもう一人のジェイコブズがいる。博物学的思考、生物学的思考を強く持った、科学者としてのジェイコブズだ。彼女は「活気のない都市は死んでいる」と言い「多様性をもった都市こそ生きている」と言い放った。彼女は文字通り『生きている」ことの本質を見抜いていたからである。都市は単なる無機的構築物ではない。むしろ、都市を生き物と考えたほうがいい。そういう視点から都市の理想を描いた在野の研究家ジェイコブズの思想にあらためて注目してみようというものだ。おそらく、次々号で特集することになるだろう。