「〈安全・安心のまちづくり〉を考える」という特集で、「検証! 安全・安心のまちづくり〈防犯編〉…日本の治安とまちづくり」をテーマに座談会を行う。出席者は、東京大学大学院工学系研究科教授・小出治さん、桐蔭横浜大学法学部教授・河合幹雄さん、東北大学工学研究科助教授・五十嵐太郎さん。「安全・安心のまちづくり」は、今や各自治体がまっさきに掲げる課題である。しかし、凶悪犯罪が多発し、日本の都市も危なくなってきたと言われているが、統計データを詳細に見てみると必ずしもそうとはいえない。むしろ犯罪件数は減少している。過剰なセキュリティがかえって不安や心配を助長させている面が強い。セキュリティ管理は、都市にとって重要な課題であるが、いきすぎた管理が新たな問題を発生させているのも事実だ。そこで、「安全・安心のまちづくり」について、一度白紙に戻して徹底的に議論してみようというのが今回の企画である。
さて座談会は、編集部の意図した通り、専門家の間でも「安全・安心のまちづくり」というスローガンのもとに行われているさまざまな試みが、じつはちぐはぐな結果をまねき、期待したような効果を上がっていないというのが共通した認識のようだ。そもそも、効果を評価することがむつかしい。犯罪件数自体戦後一貫して減っているのに印象はまったく逆だ。殺人だけに限っていうと、最も多いのが家庭内殺人。赤の他人を殺すより心中や子殺し親殺しの方が統計的にはずっと多いという。山形の事件がセンセーショナルに報道されているが、子殺しの伝統は日本ではかなり古くからあり、あまりに日常的なので事件にすらならなかった。また、少年が首をはねた事件の異常さをマスコミは強調するが、首かり殺人は日本では古来からあって(?!)、子どもが起した事件にかぎっても一度ではないという。などという、常識を覆すような話がポンポンでてきて編集部もびっくり。心理的な不安感が実態から遊離して、われわれはますます不安に苛まされているというのがどうやら現状のようだ。一度、冷静になって現状を分析してみることが絶対に必要だ。その意味で、今回の特集は非常にタイムリーな企画である、などと自画自賛。詳細を知りたい方は、ぜひ『City&Life』no.81号をお買い求めいただきたい。