事務所によって、新橋経由でJRに乗り換え佐原まで。たっぷり2時間以上の旅。東洋大学の小川純生さんの「遊びは人間行動のプラモデル?」と「カイヨワの遊び概念と消費者行動」という論文を読む。両方とも肝心の消費者行動のところまでいかず、それとなくほのめかして終わっているのが惜しまれるが、そこまでの論理はとても面白かった。これはかなり参考になると思う。せっかくカイヨワの講談社学術文庫版を買い直したのに。なんだか読む気がしなくなったほど。これは使えると思うし、この先生にもあってみたくなった。佐原駅で、ライターの石本君代さん、カメラマンの秋山由樹さん、斎藤夕子さんと合流。今日は、『City&Life』の最後の取材。歴史ある町並みを資源に再生をはかる佐原市を実際に見て回わろうというもの。
駅前は、どこもシャッターが下りた店ばかり(いくらなでもほとんどの店がシャッターを閉めていて心配になったが、たまたま定休日の店が多かったとわかりちょっと安心)。佐原市はじつは、合併して香取市になったばかり。しかし、市の印刷物もまだ佐原市になっている。東京駅でよく知られている建築家辰野金吾のデザインを踏襲している三菱館の前に、本日の案内役である「小野川と佐原の町並みを考える会」副理事・吉田昌司さんがすでに待っておられた。さっそく、町を案内してもらう。市内を流れる小野川沿いと香取街道沿いには、江戸時代から昭和初期までの商家が建ち並ぶ古い町並みが残っている。この地域の中心部には、国の選定を受けた重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)と、これを取り囲む景観形成地区(景観地区)がある。川越などとちがって、明治、大正、昭和初期という3代に渡った建物が残っているところに特徴がある。吉田さんの案内で見学をしながら撮影をする。香取街道沿いの店をみて、小野川にかかる樋橋へ。この橋は別名ジャージャー橋という。小野川を横切って水田に放水するために橋の床部分に水路がくっついているのだ。中央部分から30分間隔で水が流れ落ちるしくみになっている。その音が周囲に響きわたるのでこの名前がついた。樋橋のたもとには伊能忠敬旧宅がある。旧宅を見て、伊能忠敬記念館から下新町通りへ。漢学者清宮秀堅の家、与倉屋大土蔵などを見て、再び香取街道に出て、明治33年築の小堀屋本店、明治初期の土蔵の残る福新呉服店、昭和初期の洋風コンクリート造建築物・旧千葉合同銀行佐原支店、明治25年頃の建築で千葉県有形文化財である中村屋乾物店などを見る。小野川を樋橋とは反対側の川沿いへ。江戸時代より醤油の醸造をしていた店で、今は佃煮の製造販売をしている正上しょう油店。店舗は天保3年の建築で千葉県有形文化財。安政2年の建築で千葉県有形文化財の中村屋商店、棟札に「寛政十戌牛歳九月立之大工佐吉立之」とあり佐原最古と思われる土蔵がある旧油惣商店(千葉県有形文化財)などを見学。驚いたのは、創業からすでに200年たっている店がぞろぞろ残っていることだ。その間に業種が変わっていない店もいくつかあった。200年間って一体何代になるんだ?! 正上さんの店では、お話を聞かせていただき佃煮を撮影させてもらった。最後にふりだしの三菱館に戻って、中を見学させてもらう。ここは、現在観光案内所になっているが、現在リニューアル中。館長の小林和男さん、「小野川と佐原の町並みを考える会」理事長・加瀬順一郎さんと面会。いや〜、お腹いっぱいになる取材であった。みなさんご苦労様でした。帰りに、やまだ屋で鰻を肴にみんなで一杯やって解散。