タクシーでヴィラデストガーデンファームアンドワイナリーへ向かう。ここは、ご存知のように玉村豊男さんのワイナリー。『酒』の対談で、ワインは連休まで残っていないかもしれないといっておられた。長野にきたからには、ぜったいにいってみようと思っていたのだ。ランチは完全予約制。約束した13時30分に斎藤夕子嬢と席につく。部屋からはり出したサンルーム。ちょうど窓から陽が差し込んでいて心地よい。なにせ菅平では雪が降ったそうな、寒かったのですよ。
まず、アペリティフにシードル。もちろん玉村さんのワイナリー製造。キリッと冷えて美味しい。レンヌのレストランで飲んだシードルより、ドライで食前酒としても十分楽しめる。本場のより美味いということか。前菜は、朝採りアスパラガスの盛り合わせ。湯でたアスパラと一緒に生のアスパラが数切れのっていた。玉村さんの農園からの直送。ややシャキシャキしたはごたえに驚く。食べ慣れたアスパラの食感からは想像できなかったから。ワインを頼む。ヴィラデストヴィニュロンズリザーブ2004・メルロー。じつは、これはもうカフェでしか飲むことができない。すでに売り切れてしまったからだ。お土産に1本買って帰るつもりだったのに。やはり来て良かった。さて、そのお味は、もちろん言うことなし。一言で言えば、若くて力強いワイン。十分に熟成させて飲み頃を待つというより、今飲むべきワインのように思えた。葡萄づくりは、玉村さんにとっては野菜づくりとなんら変わりがないのだろう。ワインにおいても、フレッシュさをなによりも大事にしているのだろう。メインデッシュは「プチサレ(塩漬け豚肉)と新玉ねぎと春キャベツ」。玉村さんのレシピでつくられているのだが、全体に味は薄め。野菜本来のフレッシュな味わいを存分に引き出したいという玉村さんの思いからだろう。肉においても同じ。ソースは、塩・胡椒をベースにハープ類を加えながら、薄味ながら深みと陰影をつくりだしている。肉の繊維までがすごく生き生き感じられる。でも、驚いたのは新玉ねぎの美味しかったこと! これこそが野菜の本来の味! と思わず口に出してしまったほど。なんともみずみずしい、それでいて玉ねぎのふくよかな甘みがパッと口のなかに広がる感じ。赤でもフレッシュだから、このワインとはじつに相性がよい。デザートは、チョコレートアイスクリームとチーズケーキにビスケット。ここは、ディナーはやっていない。このランチがいわば、ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリーのメイン料理。2時間ばかりのランチタイムだったが、すっかり堪能してしまった。もちろん、斎藤嬢もご満悦。帰りに、玉村さんの畑をぐるっと見て回る。葡萄畑はこれからという感じで見た目にはちょっと寂しい風景だが、これがたわわに実を付けている頃だったら、ワインにありつくことはできなかったわけで、どちらをとるかということだ。ぼくは迷わず、景色より食べて飲む方をとりました。