『City&Life』の特集エリア・スタディ・シリーズ「わがまち流まちづくりのすすめ」で高松取材。『nature interface』の田井中麻都佳さんと一緒だ。ホテルのロビーにつくと建築家・林幸稔さんが迎えにきてくれていた。挨拶をかわす。さっそく歩いて「丸亀町商店街振興組合」の事務所へ。専務理事・古川康造さんと青年会長・矢野和宏さんに面会。「TMO丸亀町商店街の取り組みについて」お聞きする。すでにA街区の再開発が始まっていて、実行されるまでの経緯と苦労について話をしていただいた。
地権者の説得から始まって合意形成まで14年。企画力と行動力、努力と忍耐の賜物である。印象的だったのは、とにもかくにも再開発を成功させるには、源資をどう確保するかがカギだということ。また行政をたよっていてはダメ。自分たちで「自治権を確立」することが、なによりも大事だと強調。商業者がその牽引役になることに疑問もないではなかったが、古川さんの話を聞いて、考えを改めた。むしろ商業者という立場だからこそ遂行できることだってあるのだ。進んで汚れ役をかってでることも必要になるし、商業者の発想の根底には、利益の追求がある。それを押し進めるためには何が優先されるべきか。彼らは、そこに住み暮らす人々の代表でもある。それが重要だ。彼らの主張する利益とは、一にも二にも自分たちの利益である。開発会社の利益でも、大企業の利益でもない。自分たちのまちで継続して商売ができて、利益を上げたい。それをするには、何が課題か。彼らはそれを一番よく知っている人たちのだ。これから他の5つの街区の再開発に着手するわけだが、今後はそれを5年以内でやらなければならない。この課題に挑戦し、独自の「高松スタイル」ともいうべきビジネス・モデルをつくりたいとのことであった。A街区の完成予想図をみたが、なかなか素敵だった。イサム・ノグチ庭園美術館へクルマで移動。牟礼町の屋島と五剣山に挟まれた砕石場(庵治石)そばにつくられた広大な彫刻公園。イサム・ノグチの作品が展示されているが、完成品ばかりでなくいまだ制作途中のもの、材料とすべき切り出したばかりの石なども隅々に置かれている。公園そのものが環境作品となっている。ここは、もともと彫刻家・和泉正敏さんのアトリエがあったところ。イサム・ノグチは、ここが大変気にいって自らのアトリエとしたのだという。代表作、「エナジー・ヴォイド」「真夜中の太陽」など鑑賞。もと丸亀の豪商の屋敷を移築し住居として使用されていたイサム邸も公開されている。彼がとりわけ気に入っていたという景色を見るために設えられた築山に登る。遠くに瀬戸内の入り江が見える。ここにしかない、ここでしか味わえない、イサム・ノグチの精神のランドスケープを堪能した。山田屋でうどん。ここは、『談』でお世話になった香川大学の上杉正幸さんにつれていってもらったところだとあとから気付いた。そのあと桜製作所へ。ジョージ・ナカシマの家具を展示している。永見宏介さんに話を伺う。ADKで「瀬戸内アートコンソーシアム」の構想について、ADK四国支社支店長・三井文博さんと片山明子さん、某省の長谷部文子さんと会談。そのあと、あらたに拠点となる「まちラボ」を見学。丸亀商店街を歩く。林さんは、どこでも知り合いに遭遇しては立ち話をしている。顔がめちゃくちゃ広い。林さんは、讃岐うどん店を400点踏破したと豪語していた。また、黒人音楽が好きで、クルマにはブルースハープが置いてあった。夜は、「遊」でまちラボ事務局長・浜崎直哉さん、銀杏山徳法寺福住職・蓮井玄展さん、そして元気のいいデザイナー・小西智都子さんらと会食。ブラスバンドで盛り上がった。ニューオリンズで昼間マルディグラ、夜DDBB(ダーティ・ダズンズ・ブラス・バンド)のライブを見たという話から火がついて、BBBB(ブラック・ボトム・ブラス・バンド)の話やら、音楽でまちおちおこしは可能か、はたまた「まちづくり」には、陰の部分、アブナイ部分も必要じゃないか、とか話はあっちへいったりこっちへいったり。しかし、こうやって立場も仕事も違う人たちが、「まち」をきっかけに集まっては議論しアクションを起こし続けているというのは、まことにうらやましい。高松という場所性なのか。いや、たぶん彼らのキャラがそうさせるのだろう。たっぷり呑んで、楽しい一夜となった。