ブログを過去に遡って更新する。日々綴っている日記から書き写すわけだが、時々これをやると妙に客観的になって面白い。日記は、一見リニアなドキュメンテーションのようにみえるけれど、じつはさまざまな時間が交差する一種のノードなのだ。未来からの視線や現在を過去から覗き見るなどということも日記では普通に行われている。いわゆる「偽りの過去」なんて日常茶飯だし。日記をメディアとして一度ちゃんと考えてみる必要があるかもしれない。そんなことを考えながら、NHK ETV特集「木村伊兵衛の13万コマ〜よみがえる昭和の記憶」を見た。木村伊兵衛はスナップというモダニズムに根ざした写真技法を深化させた写真家だ。彼の生涯のテーマは東京の下町と秋田の農村であったが、両者を捕獲するまなざしには共通点がある。モダンというポジションの一貫性だ。現在あるいはほんのちょっと未来の視点から、世界を眺め直すこと。それをまったく意識しないでやってしまったところに木村という写真家の特質がある。徹底的なモダニズムゆえに、かえって伝統や慣習といったものを写像に蘇らせてしまったのだ。新しさ新奇さを追求することは、新しい「絵」をつくることでは必ずしもない。時にそれは、古いものに目を向けさせることにもなる。木村伊兵衛のモダンの眼は、現在の中に畳み込まれた過去の陰影をあぶり出すのだ。モダニズムのまなざしがなければ、われわれは永遠に文化の古層に出会うことはなかったのではないか。モダニズムを過去へ向かう反対の時間と捉え直して見る。それは、時間を空間化することだ。潜在性の問題系がここにも表出している。