国立博物館に隣接する東京文化財研究所へ。首都大学東京准教授・鳥海基樹さんにインタビュー。フランスのまちづくりをコンパクトシティという観点から見直すというテーマ。結論から言うとフランスの都市計画に直接コンパクトシティを謳ったものはない。しかし、都市のスプロール化を防ぎ、持続可能的成長を志向し、都心居住を推進する姿勢は、結果的にコンパクトシティを実現しているのではないかという。中心市街地の活性化、無秩序な郊外化の制御、街なか居住の促進という都市再生論では必ず上がる課題について、フランスではどう取り組んでいるか、またどういう方策で臨んでいるか、パリのいくつかのまちを事例にお話いただいた。
何より大きな特徴は、消費者=居住者の便益が最優先されること。たとえば、日本では郊外型大型店の出店と商店街の衰退が問題となっても、消費者=居住者はいつも蚊帳の外だ。しょせんサプライサイドの利益の最大化がそこでは目標となる。結果、大型店同士の競争になり、一方が負けて撤退すると、商店街もないSCもない、商業空間のゼロ地帯ができてしまう。もっとも割を食うのは地元住民=消費者ということになる。対してフランスでは、サプライサイドより消費者の便益を優先する。だからといって大型店であればすべて規制の対象となるわけではない。消費者がそれを望めば、誘導容積率を活用して大型店舗の出店を誘発することもあるのだ。とにかく、法律の運用がじつに柔軟なのである。もちろんそれはほんの一例で、住宅政策、土地利用、歩行者空間の整備、トラムやバスなどの公共交通の整備などみならうべきところは沢山ある。コンパクトシティなどというお題目を掲げなくても、コンパクトシティを実現しているというところがいい。最後に、バスティーユ広場からバンセンヌに敷かれていた貨物路線の廃線高架橋下をリノべして、職人たちのアトリエやショップとして転用している事例を紹介してくれた。上部は歩行者専用の緑道として市民に開放されている。早く知っていれば昨年見て来たのに、と思わずS藤嬢と顔を見合わせた。でも、これでまたパリ取材の口実ができたということか(?!)。