バイオの力を認識することは、自らの「いのち」のもつ神秘に気が付くことでもある。それが他者の「いのち」に向かう時、愛情と慈しみの気持ちが溢れ出てくる。だが、憎悪と破壊への欲求も同時に生じていることに無自覚であってはならない。バイオの力は「いのち」に内在する力の発現だ。それは自然の驚異であるとともに脅威でもある。
ところで、発酵というメカニズムは、バイオの力を経験科学的に了解し、可視化させる有力な実験炉なんじゃないだろうか。乳酸菌、酵母、有機農法、自然主義、エコロジー。そしてそれがどこかでちょっとばかり偏奇(クリナメン)すると、ナチズムを胚胎してしまうという歴史的事実。発酵をバイオのメタファではなく、リアライズされたゾーエーとして捉え直してみる。『ナチス・ドイツの有機農法』を読んでいたら、両義的なバイオの力という考えが浮かんだ。