『談』ではおなじみのアーティスト木本圭子さんが『美術手帖』05年1月号の「境界線上の開拓者たち」第7回に登場している。この連載は、齋藤環さんが今関心のあるアーティストをインタビューしコメントするというもの。齋藤環さんは、戸田ツトムさんらが編集している『d/SIGN』のインタビューを目撃(彼の表現)して、「これまでに見てきたいかなるCG作品ともまったく異なる」ことを察し、いつか必ず会いに行かなければならない(彼の表現)と思い、今回それを実現させたのだそうだ。その時の衝撃と木本さんへの取材は、全面齋藤環ワールド。ドゥルーズ=ガタリの階画論を梃子にして、身体の空間領域(エロス・感覚・表象)がいかにして運動を獲得していくか、木本さんの作品にそれを見出そうという試み。東京都写真美術館「ミッション:フロンティア」の展示と『Imaginary・Numbers』(工作舎)から、いくつかの作品がピックアップされている。その撮影者が伊奈英次さん。ここに登場する人はすべて過去になんらかのかたちで『談』と関わった人たちだということを言い添えておこう。
若手写真家・藤部明子さんプリントを持って来社。8×10のプリント。『談』最新号で彼女の作品を3点掲載するため。ツァイトからすでに終わってしまった藤部さんの展覧会の案内が郵送されてきていて、今日改めて正しいチラシがfaxされてきた話をする。彼女は大笑い。2冊目の写真集『Memoraphilia』が年内発行の予定だったが、来年初頭になるとのこと。ところで、やはり一冊目のオビの都築さんのコピー「なんてやさしいんだろう」はみんな違和感があったらしい。そりゃそうだ。今度のは池澤夏樹さんが書かれるとか。それは期待できるぞ。
藤部明子さんの処女出版『The Hotel Upstairs』
The hotel upstairs―サンフランシスコレジデンシャルホテルの人々
藤部明子さんの処女出版『The Hotel Upstairs』
The hotel upstairs―サンフランシスコレジデンシャルホテルの人々
写真家の大西成明さんから写真集『ひよめき』(ピエ・ブックス/2004)を贈呈していただいた。帯には「世界で一番美しい脳の写真集」とあるが、まさにコピーに偽りなし。想像力を駆り立てる素晴らしい脳の写真が一つづつ丁寧に活写されているではないか。それもモノクロームなのがまたいい。
大西さんの脳の写真を見たのは、日本政府が海外向けに発行している広報誌に載ったものが最初だったと思う。その後、脳科学者の故松本元さんにご参加いただいた研究会の打ち合わせで理化学研究所脳科学総合研究センターへお邪魔した折りに、巨大な脳のポスターが壁に貼ってあったのを見た。その写真が大西さんの写真だった。この写真も写真集に掲載されている。『フライデー』連載の「病院の時代」で現代の医療空間にレンズのメスを入れて僕を大いに興奮させた大西さん、今度の仕事も驚嘆しましたよ。川上弘美さんのエッセイ「脳に会う」も面白い。
ひよめき―大西成明写真集
大西さんの脳の写真を見たのは、日本政府が海外向けに発行している広報誌に載ったものが最初だったと思う。その後、脳科学者の故松本元さんにご参加いただいた研究会の打ち合わせで理化学研究所脳科学総合研究センターへお邪魔した折りに、巨大な脳のポスターが壁に貼ってあったのを見た。その写真が大西さんの写真だった。この写真も写真集に掲載されている。『フライデー』連載の「病院の時代」で現代の医療空間にレンズのメスを入れて僕を大いに興奮させた大西さん、今度の仕事も驚嘆しましたよ。川上弘美さんのエッセイ「脳に会う」も面白い。
ひよめき―大西成明写真集
Y社のためにつくった報告書から一部を抜き出せば、そのまま「〈信ずる〉ってなに?」の原稿になるなと思いさっそくデータを引っ張り出し切り貼りを始める。語尾を「である調」にしたり、頭の所に導入部を加筆したり。なんとか穴埋めの原稿
完成。「en」編集部へ送る。
完成。「en」編集部へ送る。
札幌大学教授鷲田小弥太先生から新刊『28歳までに人生の目的を見つける方法』(海竜社)を贈呈していただいた。「やりたいことが見つからない」若者に向けた自己啓発本。鷲田先生、僕もう若者じゃないんですが。皆さんに紹介してほしいということで送って下さったんですよね。確かに、面白い本です。ためになります。28歳を大きく越えた人にも役立つことが沢山書かれていますから。
28歳までに人生の目的を見つける方法
28歳までに人生の目的を見つける方法
渋谷文庫タワーで清原なつのの「花図鑑」などを購入。長らく絶版になっていたものの復刻再版。ハヤカワ文庫に入っていたとは。とにかくうれしいことだ。合田正人訳のドゥルーズ「ヒューム」と小川洋子さんの「余白の愛」も。昨日の続きで立岩真也さんの原稿。最初から読み直し推敲。とにかくつくり終える。こうやってあげてみると、面白いことに立岩ディスクールになっている。なってしまってるというべきかもしれない。このひとの語り口は、そうとうに特徴的なのだろう。つまり、思考の経路、論理の組立方がそもそもそうなっているというわけか。大森荘蔵を読み直す。「重ね書き」「想起は言語的命題」「語り存在」マイケル・ダメットの「酋長の踊り」などをキーワードに「信ずる」について書こうと考える。
「en 」の企画でお茶の水女子大学学長本田和子さんをインタビュー。広い学長室の奥に座ってらっしゃった本田先生は、まったく偉そうな感じがなくて、予想どおりのとてもかわいい人だった。80年代、先生が鮮烈なデビューを果たされた時の印象を伝えると、「あの時代はおもしろかったわね」と懐かしそうに相づちを打たれた。
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本田和子さんの『異文化としての子ども』『変貌する子ども世界』を読む。あらためて読み直してみると『異文化としての子ども』は面白い。「ひらひら」の系譜は、今のオタク文化、とくに女の子のオタク文化の解読に役立つように思った。というか、今日の女の子のオタク文化も「ひらひら」の系譜に包摂されてしまうように思えたのだ。たとえば、「マリア様がみている」は、「ひらひら」の系譜から見ると、どう捉えられるのか。興味尽きないところだ。『変貌する子ども世界』では、子どもという存在が、結局のところ消費社会のターゲットであり続けたことを明らかにした。20世紀が「児童の世紀」という意味は、それを言ったエレン・ケイの意とは別に、消費社会、資本主義を駆動するまさに格好のエサだという意味だったのだ。
塩事業センターで来年度の打ちあわせ。ところが思いよらないことが。「信ずるってなに?」12月号の原稿を落としたYさんの穴埋めをしろというのだ。kさんから頼まれてはうんと言わざる得ないが、はたして書けるのだろうか。Oさんらと新宿センタービル53Fの「月の蔵」。眼下に新宿の町。茂木健一郎さんと会食。もう1年引き続き連載をお願いする。茂木さんは、僕の書評が辛口だという。そうだろうか。
インコミ編集部の柴さんから「Inter Communication」no.51を贈呈していただく。特集は「Visual History 映像・歴史・メディア」。表紙を見てちょっとびっくりした。鵜飼哲さんと佐藤真さんが「デリダとサイードの痕跡」をテーマに対談をしているからだ。じつは、筆者の名前も佐藤真。同姓同名なのだ。このことは以前牛腸茂雄の写真展を見た時に記したが、面白いのは筆者も『談』no.58「記憶と他者」で鵜飼さんに「記憶の記憶、忘却の忘却 デリダ・声・友愛」というインタビューを行っているからだ。ネームバリューも業績も映画作家の佐藤さんには遠く及ばない存在ではあるが、同じ人物をお相手に、しかも限りなく近い内容の話をしているということが、とても興味深く思えたのである。筆者には、この対談はまさに「記憶と痕跡」そのものであった。