デジカメってやっぱりすごいかも

朝日新聞の松葉一清さんが11月5日付け夕刊で「デジタルカメラ最前線」というコラムをはじめたが、その1回目に紹介されたPECさんのフォトギャラリー
というのがすごかった。名古屋JRセントラルタワー夜景と題された作品で、名古屋駅の高層ホテルとその周辺を極端にあおりを効かせて撮影されたものだが、これって本当なの?と思わせるに十分な虚実皮膜の世界を作り出していたからだ。さっそくHPにいってみると、あるわあるわ、横浜ランドマークタワーから俯瞰した360度パノラマ、浜松町貿易センタービルから俯瞰した360度パノラマとか、さらにはCubic VRによる変幻自在のみなとみらい21の俯瞰360度パノラマなど。PECさんじつは岐阜大学の先生。その驚くべき画像は、市販のデジカメで撮影しデジタル加工して作り出したものという。いやはや、デジカメ恐るべし。そういえば、真言宗の僧侶梶井照陰さんの撮影した波の写真
も、デジタル処理によって可能になった自然/人工の世界だった。カメラによって視覚世界は拡張し変容した。そして、今、デジカメの一般化によって、視覚世界そのものが大きく変貌しようとしている。いかにも言い古された言い方だが、これらの写真を見ると、あえてこんな陳腐なことを言ってもみたくなるのだ。

『生きづらい〈私〉たち 心に穴があいている』

香山リカさんから『生きづらい〈私〉たち 心に穴があいている』(講談社現代新書)を贈呈していただいた。長い間現代新書といえば杉浦康平さんと決まっていたが、40周年を期にその装丁が中島英樹さんに変わった。その新刊の一冊。「「心に穴があいている」という感覚を抱え、自分の感情や思考の引き裂かれに苦しむ人、さらには穴があいているどころか、自分がいくつにもバラバラになり、「どれが本当の自分なのだろう」と苦しむ人について、「満たされない私、傷つきやすい私」「いくつもの私、本当の私」「最後の砦としてのからだ」という三つの柱を軸に、分析していく。これまで、心の相談役というような立場からの発言が多かったが、この本では精神科医という本業の立場に立って、現代の若者たちのこころに起っている問題を解き明かす。印象的だったのは、最終章で「偶然」性に自らを委ねることに、ひとつの救いがあるのではないかと示唆していることだ。たまたま、木田元さんの『偶然性と運命』(岩波新書)を読んで、「偶然」というものが時に「必然」に変わり、私たちの心を開くドアとなることがあることを知ったので、特にこの指摘に共感した。
生きづらい<私>たち 心に穴があいている

『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』を贈呈していただく

『談』の表紙に作品を提供してただいている岡崎乾二郎さんから絵本『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』(クレヨンハウス/2004)を贈呈していただいた。谷川俊太郎さんのあかちゃんから絵本の6。岡崎乾二郎さんがまず絵を描き、その絵を見て谷川俊太郎さんが文を書かれた。岡崎さんは、以前小学館から『れろれろくん』という絵本を上梓しているが、本格的な絵本に取り組まれたのは今回で二回目。「ぱぴぷぺぽ」というそれぞれの文字が、油絵の具で描かれた不思議な生きもの(?)とたわむれるように、あっちへいったり、こっちへいったり。繰り返しページをめくっていると、今まで耳にしたことのない音楽が聞こえてくる。絵本のかたちはとっているものの、これは21世紀のグラフィックスコアなのかもしれない。

「疾風迅雷」展と石毛直道講演会

昨日のつづき。
銀座グラフィック・ギャラリーで「杉浦康平さんの展覧会「疾風迅雷 雑誌デザインの半世紀」を見る。会場に入ると、『パイデイア』『エピステーメー』『遊』『銀花』などが並んでいる。『銀花』以外はほとんど所有している(別のBlogで以前に紹介ずみ)。偶然会場にいらしていたモリサワの池田さんに自慢した。巨大なエピステーメーの模型(実物よりはるかに大きいからモックアップとはいわないか)の展示が眼を惹いた。B1を見ると、『噂の真相』の休刊カウントダウンの表紙が順番に並んでいる。こうして系統づけて見直してみると、個人的には『噂の真相』が最も面白かったような気がした。杉浦さんのデザインは、社会やジャーナリズムといったものとの方がより共振するのではないか。ものすごいエネルギーがほとばしっているように見えたのだ。
夜は、塩事業センターの石毛直道講演会「塩味の民俗学…しょっぱいはおいしい」を聴講する。石毛先生とは、過去に、雪印の『SNOW』誌の連載企画で約3年近くお世話になり、また玉村豊男さんとのロング対談、さらには、『談』で樺山紘一さんとの対談、芳賀徹さんとの対談などにご参加いただいた。今回は、塩の味についてお話されるというので出向いたわけだ。
続きを読む

まちづくりの分野でも公共性の再定義が…

計画技術研究所所長林泰義さんにインタビュー。テーマは「NPOとまちづくり」。今この分野はどんどん動いている。林さんの現在の関心も、「新しい公共性」についてだった。NPO、まちづくり、地域再生、居場所づくりを関係づけていくと、コミュニティ・ビジネスや市民金融、協働という実践の側面からいくつかのキーワードが出てくるが、理論、理念の側でいうと新しい公共性=「公共性の再定義」が重要なキーワードになる。林さんの考えや活動と『談』の特集が期せずして一致した。続きを読む

人間と人間以外という区別

イラクで人質となった香田さんはどうなってしまうのか。確かに、フラフラ遊び半分で行くところじゃないし、あまりに思慮に欠ける行動だと思う。
しかし、だからといって見殺しになってもしかたがないというような今の世間の空気は、やはりおかしい。
志しが高ければいいのか。一所懸命イラクのために働いている人間なら救う価値があるが、
バックパッカーは自業自得、首をおとされてもやむえないなんて、
いったい誰が決めたのか。救われる必要のある者と救う価値すらない者。

人間と人間以外。人間と認められない人間の存在。
アガンベンなら例外状態というであろうこうした存在に対して僕らの社会は、どう対応していくのか。これは、僕の今の問題意識と直結していて、今後の動向がとても気になる。成り行きをきちっと見定めなければならないのだが、正直なところとても気が重い。

陣内秀信先生とナポリ、そして牛腸茂雄展

法政大学教授・陣内秀信先生に取材。『C&L』のブックリストの特集のため。先生が以前つくったと思われるリストをもとに行われた。テーマの「魅力ある都市とは」というよりは、「江戸・東京論の系譜学」。コラムにしようと思ったネタを、もっと深く丁寧に解説。こっちの方がいいので、コラムの方を変えることにする。終わりにナポリの話になり、教え子がナポリに住んでいるので、ぜひなんか企画して、行きましょうということに。ナポリだけでなく、バーリも近年すごくよくなったと、南イタリアにハマっている陣内先生でした。そのあと、三鷹市美術ギャラリーと芸術文化センターの二箇所で開催されている「牛腸茂雄展 自己と他者」を見る。そこでなんとも不思議な経験をすることになる。続きを読む

都市再生論の真相と畠山直哉さんの新プロジェクト

慶応義塾大学教授・日端康雄さんの取材。「都市再生論とはなにか」というテーマで、文献案内をしていただきながら、都市再生論の経緯、含意、課題についてお話いただいた。都市再生を主題とする文献は少なくないが、経済との関わりから論じられたものは意外なことに少ない、というか皆無に等しい。しかし、都市再生論には、じつは90年代以降のグローバル経済の動向が深く関わっているのだ。続きを読む

木本圭子さんNYで初の個展

案内が少し遅くなってしまったが、『談』ではお馴染みの木本圭子さんが、NYで始めての個展を開いている。昨年出版された作品集と同名の「Imaginary・Numbers」というタイトル。
プログラムによって生成される「虚数」/「想・数」の世界を、欧米人はどう見るか興味津々だ。
11月末までなので、NYに出かけられる予定のある方はぜひ立ち寄ってみて下さい。1Fにエルメスのショップの入っているオシャレなビルの8F。
MIKA
GALLERY
15 October-30 Novenber 2004
41 E 57, 8th flr
New York, NY 10022
tel 212-888-3900

木本fig .jpg続きを読む

路面電車廃止決定の裏話

都市プランナー・望月真一さんをインタビュー。7月に取材した中部地方のある地域の路面電車廃止決定の話がまくら。採算が合わないからとか利用者が少ないからとかクルマ社会だからという理由もうそではないが、公共交通問題というのは、高給をとっている年寄り役人の首切りがじつは一番大きな目的という意外な真相。電鉄企業も自治体も、結局公共交通あるいはまちづくりを本気で考えようとしていないということなのだ。都市問題は、やはり、金とコネと政治の駆け引きが引き起こすものなのだとしたら、なんだかなぁという気持ちになりますね。日本の話が長く続いて、ようやくフランスの話。フランスの地方都市では、交通政策と都市デザインがじつにうまく連動している。日本の都市に未来ない、とつくづく思ってしまう今日この頃。
Monthly article
訪問者数



『談』とは
 
●最新号

No.110
幸福の空間戦略…地域再生〈新〉論
 
●バックナンバー
No.93以前のバックナンバーにつきましては、アルシーヴ社(03-5779-8356)に問い合わせください。

No.109
〈ポスト真実〉時代のメディア・知性・歴史

No.108
おいしいってなに?……ひとは食をどう表現してきたか

No.107
老い衰えゆくからだ……話す・動くから考える

No.106
人と動物……動物は動物なのか

No.105
科学を科学する…領域を超えて
 
 
●別冊

Shikohin world 酒

Shikohin world たばこ

Shikohin world コーヒー
 
『談』アーカイブス