「〈向こう三軒両隣り〉のまちづくり」というアイデアが浮かぶ。地域ほど広く(大きく)なく、家族ほど狭く(小さく)ない最小単位。市民主体のまちづくりをこの単位からはじめてみようという提案である。一種の親密圏をこの程度まで拡大解釈し、公共圏と重ねあわせる。その核になるのが「路地」「横町」だ。排他性の強い「隣組み」、理念的共同体の意味合いの強い「地域」と一線を画し、多様性と複数性に開かれているところに大きな特徴をもつ。齋藤純一さんがノルベルト・エリアスの言葉を使って概念化したサバイバル・ユニット(生活のセキュリティの基本単位)にも十分対応すると思うのだが。「路地」「横町」の復権を、この視点から探ってみようと思う。
マダガスカル島で調査中の島泰三さんからのmailを待っている。「en」のスペシャル・インタビューのチェック原稿のことだ。おそらく今回もヌシ・マンガペ島という無人島へ入っているのだろう。ということは、しばらくは都市部に帰ってこない? 島さんは、世界三大珍獣の一つアイアイの謎を解明した世界的に有名な動物学者だ。細くて長い中指と大きな耳、大きな切歯をもつリスによく似たサル。著書『親指はなぜ太いのか』(中公新書)があまりに面白かったので帰国した時に、取材をさせてもらったのである。マダガスカル島はアイアイのふるさと。島さんは、アイアイの保護運動をしているのだ。それにしても、マダガスカル島にmailが届いてしまうというのは、やはりすごい時代だと思う。マダガスカル島はアフリカの東側、ガラパゴス島は南米の西側。どっちも一度は行ってみたいところだ。そんなことより、早くお返事こないかな。
人文書院の編集者から連絡をもらう。龍谷大学教授・杉村昌昭さんの単著の発刊を予定している。そのなかに『談』no.68「こころとからだのエコロジー」に掲載した杉村さんのインタビュー「精神・社会・環境 ガタリの三つのエコロジー」を収録したいという要望だった。もちろん大歓迎です。生前、ガタリさんと直接話を交わした編集者の一人として、ガタリさんに関することならば、協力はおしみません。とくに、このインタビューは、ぼく自身が気にいっているので、再録はとてもうれしい。それにしても、人文書院づいているなあ。
『ユリイカ』4月号特集「ブログ作法」に「活字とWebのコンティニュイティ 雑誌化したBlog」を寄稿。『談』の編集発行と並行してBlogをやっている意味を、70〜80年代に異彩をはなっていた二つの雑誌『遊』と『Heaven』にからめて書いてみました。内容は措くとして、えっと思うようなビジュアルを載せたので、興味のある方は書店で見て下さい。
それから遅くなりましたが、人文書院発行『生命の臨界』に、『談』no.71の小泉義之さんインタビュー「ゾーエー、ビオス、匿名性」が収録されました。ほかに、『談』で過去にインタビューさせていただいた松原洋子さんや立岩真也さんの対談なども掲載されています。
生命の臨界―争点としての生命
『ユリイカ』2005年4月号特集*ブログ作法
それから遅くなりましたが、人文書院発行『生命の臨界』に、『談』no.71の小泉義之さんインタビュー「ゾーエー、ビオス、匿名性」が収録されました。ほかに、『談』で過去にインタビューさせていただいた松原洋子さんや立岩真也さんの対談なども掲載されています。
生命の臨界―争点としての生命
『ユリイカ』2005年4月号特集*ブログ作法
路地は、今、まちづくりで話題にのぼることが多い。これまで都市再開発で、防災・防犯などの観点から、潰す対象でしかなかったのが、ここにきてプロパーからも関心がもたれるようになってきた。路地のもつ脱構造的なシステムやそこに息づくコミュニティを無視できなくなってきたからだ。路地は欧米のまちづくりの関係者からも注目されはじめている。なんと「roji」と表記(世界共通語)されて議論されているらしい。英語の「alley」では、路地のもつ独特の雰囲気は伝わらない。その微妙さはいっそ「roji」とそのまま言ってしまった方がいいということなのだろうか。そこではっと思った。世界共通語といえば、あの「umami」がそうだし、最近では「otaku」もそう。日本語がそのまま世界標準になる例がぼちぼと出てきている。そう思ってちょっと考えてみたら、「路地」と「うま味」と「おたく」、なんかものすごい共通性がある。この三つは、どれもまったくのオリジナルではないものの、ある見方を導入することで、がぜんオリジナリティを発揮し出したものではないか。その誕生期は、少し白い目でみられたり、傍系と思われていて辛酸をなめたりもした。が、ある時、にわかに脚光を浴び出す。そして、いまや日本文化を語る重要なマテリアルになりつつある。roji、umami、otaku。まち、食、サブカルが、ぼくのなかでつながってしまったのだ。
大塚英志さんが「OTAKU」展をぼろくそに言っているというのでさっそく『新現実』の3号を買いにABCに行くがどこを見渡しても置いてない。『10+1』の万博特集も。両誌ともまだ出ていないってこと? かわりに、戸田山和久さんの『科学哲学の冒険』、森達也さんの『いのちの食べ方』、『建築する身体』のトイレットペーパー版
を購入。世界初のトイレットペーパーの本は、荒川修作+マドリン・ギンズのパリで開催される国際シンポジウムに記念でつくられたらしいが、こんなことをホンキで実現させちゃうのは編集部の小島さんでしょう。値段も驚きの334円(2個セット700円)。トイレットペーパーよりはちょっと高い。日常を変えよう、といわれてもやはりトイレじゃ使えませんよ、もったいなくって。
を購入。世界初のトイレットペーパーの本は、荒川修作+マドリン・ギンズのパリで開催される国際シンポジウムに記念でつくられたらしいが、こんなことをホンキで実現させちゃうのは編集部の小島さんでしょう。値段も驚きの334円(2個セット700円)。トイレットペーパーよりはちょっと高い。日常を変えよう、といわれてもやはりトイレじゃ使えませんよ、もったいなくって。
『City&Life』の企画委員会。林泰義さん日端康雄さん小谷部育子さん陣内秀信さんの全員ご出席。まず、今日の大ニュース、丹下健三さんの死去の話題。ケビン・リンチ『都市のイメージ』の翻訳は丹下さんの名義だけれど、林さんの奥方富田玲子さんがほとんどやったんですよね、という裏話など。さて、企画案いっぺんに3本提案する。やはり最初の企画案「路地・横丁空間からの都市再生」にみなさん関心を示す。いつにもまして発言が多い。陣内秀信さんが路地・横丁と一言でいっても、空間的な意味からみるといくつかに分類できるのではないかと、木密ゾーン、住宅地ゾーン、花柳界ゾーン、飲み屋街ゾーン、元闇市ゾーンなどに分けてみては、という提言。なるほど、これは正解かもしれない。京都には、袋小路が2000〜3000もあるという報告も。もともとは表だった路地に背中を向けてしまった店舗や民家が目立つ。こういう不愉快空間が多くなったね、とは林さん。路地・横丁空間を残すとしても、全国一律ではないローカルルールを定めて、地域ごとに対応していく他ないのでは、という意見でみなさん一致したようである。
『City&Life』の全ページのゲラがあがる。ぼくの執筆したディジョンのルポ記事が面白くない。ファクトはファクトとして書くとしても、ニュアンスというものがにじみ出ていないとつまらない。そう、そのニュアンスがぜんぜん感じられないのだ。同行した編集者のS嬢のレンヌのルポ記事は、ぼくのと比べるとはるかによく書けている。とにかく読んで面白い。やはり、これからは取材旅行は、アテンドとカメラマンに徹することにしよう。でも、なんでみなさん、あんなにうまく書けるんだろう。
まだあと一つ、ブックリストづくりが残っている。シコシコやり続けて夜には完了。これで『談』の執筆関係はすべて終わる。これから、ゲラの校正。今日も眠れないのかなぁ。とほほほ。